TOP ベトナム経済 2020年1月のベトナム貿易収支、約300億円の赤字。その意味とは?

2020年1月のベトナム貿易収支、約300億円の赤字。その意味とは?

by Van Nguyen
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はじめに

先日、ベトナム税関当局が今年1月の貿易収支を発表しました。

貿易収支とは、簡単に言えば、輸出額と輸入額の差異のことで、輸出額が輸入額を上回れば黒字、下回れば赤字とされます。

今回の発表によれば、その貿易収支は約300億円の赤字となったようです。

この詳細と、今後の見通しなどについてみていきましょう。

今回発表の内容

今回発表された、2020年1月における主要項目の数値をみていきます。

【総額】

・輸出額:約2兆円(前月比18.8%減)

・輸入額:約2兆300億円(同16.6%減)

・貿易収支:約300億円の赤字

輸出入とも2兆円を超える規模となっていますが、300億円の赤字に加え、いずれも前月に比較してかなりの減少傾向がみられました。

【外国直接投資(FDI)企業】

・輸出額:約1兆2,800億円(前年同月比20.7%減)

・輸入額:約1兆1,700億円(同13.3%減)

FDI(Foreign Direct Investment)企業による輸出入がそれぞれ6割前後を占めていますが、いずれも前年同月比でかなり落ち込んでいる状況です。

*FDI企業の状況については後述します。

【品目別の輸出入額(最大の分野)】

①輸出額:携帯電話・部品

 約2,940億円(前年同月比で18%減)

②輸入額:コンピューター・電子製品・部品

 約4,600億円(前年同月比6.1%増)

IT・精密機器分野が最大の市場となっていますが、輸出額の減少に対して、輸入額は増加という結果となりました。

ベトナムにおけるFDI企業の状況

ベトナムでの輸出総額の64%、輸入総額の57.5%を占める、FDI企業の状況についてみていきましょう。

FDIの定義は、概ね次のように大別されます。

①投資先の国で新たに法人などを設立する場合(グリーンフィールド投資)

②投資先の国の企業を買収するなどの場合(M&A投資)

つまり、自社で乗り込むか、現地の企業を買収するか、ということです。

ベトナムにおけるFDI企業の状況をみると、日本からの投資額が2年連続首位となっており、製造業の追加投資も拡大しています。

住友商事などによる、ハノイ市でのスマートシティー開発案件(投資額約3,761億円)が寄与し、認可額では、日本が7,584億円と、2年連続の首位となっています。

これに続くのが韓国で、日本の約半分程度ですが、この2カ国がベトナムFDI投資を牽引しているといっても過言ではない状況です。

なお、日本からベトナムへのFDIの投資件数(2018年データ)は643件で、業種別に上位からみると、次のようになっています。

①製造(108件)

②小売り・卸売(95件)

③コンサル等(82件)

④IT(66件)

この業種が上位を占め、新規投資全体の約8割を占めています。

IT系の投資も非常に盛んであることが窺えます。

今後の見通し

ベトナムの貿易額は、国の発展とともに拡大しています。

そして、過去のベトナム貿易収支の最高値は、2019年8月に記録した3兆7,783億円(黒字)となっています。

ベトナム政府は、2019年11月に公表した「2020年社会・経済発展計画」の中で、今年のGDP成長目標を6.8%と設定しています。

過去10年間で最高の成長率を記録した2018年の実質GDP成長率は7.1%でしたが、同年におけるFDIは前年比9.1%増であり、輸出総額は約26.8兆円と、いずれも過去最高をマークしました。

ベトナム商工会議所のブ・ティエン・ロック会頭は、こうした状況を踏まえながらも、政府の2020年の目標数値について、「世界経済が衰退している中、FDIに依存しているベトナムがGDP成長率6.8%の達成は簡単ではない」と、厳しい見方を示しています。

一方、当面の追い風となっているのは、米中貿易戦争の影響と追い風に乗り、特に縫製業を中心として、制裁関税が課された中国製品の生産拠点が中国からベトナムへ移行する動きが拡大していることでしょう。

更には、ここ最近の新型コロナウイルスの世界的拡散の発信源となった、中国からの産業移転も、ベトナムにとっては非常に大きなプラス材料といえます。

ある国内大手の生命会社が発表したレポートによれば、ここ数年、ベトナム政府は、EUとのFTAの締結やAEC(アジア経済共同体)の発足、そしてTPPへの加盟など、国際間協定の推進を大きく加速させています。

この取り組みにより、外資系企業からの投資が今後もますます増加すると推測されています。

そして、ベトナムは今後も2050年までは安定的に成長を遂げると推測しており、非常に将来性が高い国といえます。

まとめ

ASEAN諸国にあって、経済的な影響力をますます高めているのがベトナムです。

今では、ASEANの優等生として、その地位を確立しています。

今回の貿易収支に関する発表も、過去の推移や今後の中長期的な見通しを考えれば、結論的にはそれほど深刻な問題ではないといえるでしょう。

世界を震撼させている、新型コロナウイルスの発生源である中国が当面、機能不全になるのを尻目に、大きな生産移管の恩恵も得て、2020年は更に飛躍が期待されます。

著者プロフィール
ペンネーム:トビウオ
マレーシア(KL)在住 海外経験はこの他にヤンゴン(2回)、ホーチミン、海外40都市への出張経験があります。
早稲田大学政治経済学部卒業 大手通信会社~大手調査会社のヘッド~ITベンダー等を経験しています。

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