企業のDX推進や業務効率化を進めるうえで、課題となるのがレガシーシステムの刷新です。長年利用してきたシステムは業務に欠かせない一方で、保守費用の増加や技術者不足、セキュリティ上の問題など、さまざまな課題を抱えている場合があります。
しかし、レガシーシステムの刷新には相応の費用がかかるうえ、移行時にトラブルが発生すると、業務停止やデータの損失につながるおそれもあります。そのため、刷新を成功させるには、事前に費用相場を把握し、想定されるリスクに対策を講じることが重要です。
この記事では、システム移行の費用相場や費用を左右する要因、レガシーシステムの移行リスク、失敗を防ぐための具体的な管理方法について解説します。
- レガシーシステムの費用面について知りたい方
- リスクの管理方法が知りたい方
- 社内のIT人材が不足している方
これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばレガシーシステム刷新を成功させるためのポイントが丸わかりですよ。
レガシーシステム刷新の費用相場
レガシーシステムの刷新費用は、対象となるシステムの規模や複雑さ、移行方式によって大きく異なります。
小規模な業務システムであれば数百万円程度から対応できる場合がありますが、複数の部門で利用する基幹システムや大規模なERPでは、数千万円から数億円以上の費用が必要になるケースもあります。
まずは、システム移行の費用相場を規模別に確認しましょう。
システムの規模別に見る費用相場
システム刷新にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
| 規模 | 費用相場の目安 | 主な対象 |
| 小規模 | 300万〜1,500万円程度 | 部門単位の業務システム、一部機能の刷新 |
| 中規模 | 1,500万〜5,000万円程度 | 複数部門で利用する業務システム、複数機能の再構築 |
| 大規模 | 5,000万円〜1億円以上 | 基幹システム、ERP、複数システムの統合・刷新 |
※上記は予算検討のための参考値であり、統一された公的な相場ではありません。対象範囲や移行方式によっては、これらの金額を大きく下回る場合や、数億円以上になる場合もあります。
例えば、特定の業務機能だけを新しい環境へ移行する場合と、販売・在庫・会計などの基幹業務をまとめて刷新する場合では、必要な開発工数やテスト範囲が大きく異なります。
また、既存システムの仕様書が残っていない場合や、複数のシステムが複雑に連携している場合には、現状調査や仕様の解析にも時間と費用がかかります。
そのため、システム移行の費用相場はあくまで初期検討の目安として捉え、自社のシステム環境に合わせて見積もりを取得することが大切です。
システム移行にかかる費用の内訳
レガシーシステムの刷新では、単純に新しいシステムを開発する費用だけを考えればよいわけではありません。移行前の調査から、データの移行、テスト、運用開始後のサポートまで、さまざまな工程で費用が発生します。
主な費用項目は以下のとおりです。
- 現状調査・要件定義費用: 既存システムの仕様や業務フローを調査し、新システムに必要な機能を整理する費用
- 設計・開発費用: 新しいシステムの設計、プログラムの改修、機能の再構築などにかかる費用
- インフラ・ライセンス費用: サーバーやクラウド環境の構築、ソフトウェアのライセンス取得などにかかる費用
- データ移行費用: 既存データの抽出、変換、整理、新環境への取り込みにかかる費用
- テスト・検証費用: システムの動作確認、業務シナリオの検証、移行リハーサルなどにかかる費用
- 教育・運用支援費用: 利用者向けの研修、マニュアル作成、稼働後の問い合わせ対応などにかかる費用
特に注意したいのが、現状調査とデータ移行にかかる費用です。
レガシーシステムでは、長年の改修によって仕様が複雑化していたり、担当者しか把握していない業務ルールが存在したりすることがあります。
こうした情報を整理しないまま開発を進めると、後から追加の作業が発生し、予算超過につながる可能性があります。
見積もりを比較する際は、開発費用の総額だけでなく、各工程の作業範囲や前提条件も確認しましょう。
システム移行の費用を左右する4つの要因
システム移行の費用相場には幅がありますが、その差は主に対象範囲や移行の難易度によって生じます。予算を適切に見積もるためには、費用が増加しやすい要因を把握しておく必要があります。
既存システムの複雑さ
長年運用されてきたシステムでは、複数の機能が密接に結び付いていたり、過去の改修内容が十分に記録されていなかったりする場合があります。
このような環境では、既存のプログラムや業務ルールを調査するだけでも多くの工数が必要です。
新システムへの移行後に予期しない不具合が発生する可能性もあるため、調査と検証に十分な予算を確保することが重要です。
データ移行の難易度
顧客情報や取引履歴、在庫情報など、移行対象のデータが多いほど、作業量は増加する傾向にあります。
さらに、古いデータベースから新しいデータベースへ移行する場合には、データ形式の変換や重複データの整理が必要になることもあります。
データの品質に問題がある場合は、移行前の修正作業も発生するため、事前にデータの量と状態を確認しておくことが大切です。
外部システムとの連携数
レガシーシステムが会計ソフトや販売管理システム、物流システムなどと連携している場合、移行対象は単独のシステムにとどまりません。
システム間の連携方法を変更する必要があれば、接続先との調整や追加開発、連携テストが発生します。
連携先が多いほど、調整範囲や検証項目も増えるため、費用が膨らむ可能性があります。
移行方式と業務停止の制約
システムの刷新方式によっても費用は変わります。既存のプログラムを活用して新しい環境へ移す方法は、全面的な再構築に比べて開発範囲を抑えやすい一方、既存システムの課題が残る場合があります。
また、業務を長時間停止できない企業では、段階的な移行や新旧システムの並行稼働が必要になることがあります。その場合、追加の環境構築やデータ同期、検証などに費用がかかります。
費用を抑えることだけを優先せず、業務への影響や将来的な保守性も踏まえて移行方式を選びましょう。
レガシーシステムの移行で注意すべき4つのリスク
レガシーシステムの移行では、費用だけでなく、移行後の業務やシステム運用に影響するリスクへの対策も欠かせません。
ここでは、特に注意したい4つのリスクを紹介します。
データの欠損・不整合
移行時に発生しやすい問題の一つが、データの欠損や不整合です。
例えば、顧客情報の一部が移行されなかったり、旧システムと新システムで金額や日付の形式が異なったりすると、正確な業務処理ができなくなる可能性があります。
この問題を防ぐには、移行前後でデータ件数や金額の合計値を比較し、データが正しく移行されたことを確認する必要があります。重要なデータについては、項目単位での照合も実施しましょう。
移行後のシステム障害
旧システムでは正常に動作していた処理が、新しい環境では正常に動作しないケースもあります。
OSやデータベース、ミドルウェアなどのバージョンが変わることで、互換性の問題が発生する可能性があるためです。
特に、会計処理や受発注処理など、業務への影響が大きい機能については、実際の業務を想定したテストを実施することが重要です。
業務停止による損失
移行作業中にシステムが利用できなくなると、受注や出荷、請求処理などの業務が停止するおそれがあります。
停止時間が長引けば、売上への影響だけでなく、取引先からの信用低下にもつながりかねません。
そのため、移行作業を実施する日時や停止可能な時間を事前に決め、業務への影響を最小限に抑える計画を立てる必要があります。
予算超過・スケジュールの遅延
プロジェクト開始後に追加要件が発生したり、既存システムの仕様が想定以上に複雑であることが判明したりすると、当初の計画どおりに進まなくなる場合があります。
特に、現状調査が不十分なまま開発を開始すると、後工程で大幅な修正が必要になる可能性があります。
こうしたレガシーシステムの移行リスクを軽減するには、初期段階で対象範囲を明確にし、追加費用やスケジュール変更が発生する条件を関係者間で共有しておくことが大切です。
レガシーシステムの移行リスクを抑える5つの管理方法
レガシーシステムの移行を成功させるには、リスクが発生してから対応するのではなく、事前にリスクを洗い出し、対策を計画に組み込むことが重要です。
ここでは、具体的な管理方法を4つ紹介します。
1. 現状調査を徹底する
まずは、既存システムの構成や機能、データ、外部連携、利用部門などを整理します。
そのうえで、現在のシステムで問題となっている点と、新システムで実現したいことを明確にしましょう。
現状調査では、システムの仕様書だけでなく、実際に業務を担当している社員へのヒアリングも重要です。
文書化されていない業務ルールを把握することで、移行後の機能不足や業務上のトラブルを防ぎやすくなります。
2. リスクを一覧化し、優先順位を付ける
想定されるリスクを一覧にまとめ、発生する可能性と発生した場合の影響度を評価します。
例えば、データの消失や基幹業務の停止は影響が大きいため、優先的に対策を検討する必要があります。
一方、画面表示の軽微な不具合などは、業務への影響度に応じて対応の優先順位を決めます。
リスクごとに担当者、予防策、発生時の対応方法を定めておけば、問題が発生した際にも迅速に対応できます。
3. テストと移行リハーサルを実施する
新システムの動作確認だけでなく、データ移行やシステム切り替えを含めたリハーサルを実施しましょう。
テストでは、個々の機能が正常に動作するかだけでなく、実際の業務フローを一通り実行できるかを確認します。
また、移行にかかる時間や作業手順、問題発生時の対応なども事前に検証しておくことが大切です。
リハーサルで発見した問題を修正し、必要に応じて再検証することで、本番移行時のトラブルを減らせます。
4. バックアップと切り戻し手順を準備する
万が一、移行後に重大な障害が発生した場合に備え、旧システムへ戻すための手順を事前に決めておきましょう。
具体的には、移行前のデータバックアップ、新旧システムの切り替え手順、切り戻しを判断する条件、復旧の担当者などを明確にします。
ただし、移行後に新システムで登録・更新されたデータがある場合、単純に旧システムへ戻すだけではデータの不整合が発生する可能性があります。切り戻し後のデータをどのように扱うかも含めて計画する必要があります。
5. 関係者間の情報共有を徹底する
システム刷新には、情報システム部門だけでなく、実際にシステムを利用する業務部門や経営層、開発ベンダーなど、多くの関係者が関わります。
それぞれの認識が異なると、必要な機能が実装されなかったり、追加要件によってスケジュールが遅れたりする原因になります。
そのため、プロジェクトの進捗や課題、変更事項を定期的に共有し、重要な判断事項は記録に残しましょう。要件変更の承認手順をあらかじめ定めておくことも、予算超過や認識のずれを防ぐうえで有効です。
レガシーシステム刷新を成功させるためのポイント
ここまで紹介した費用相場やリスク管理に加え、刷新プロジェクト全体を成功させるためには、移行の目的と優先順位を明確にすることが重要です。
刷新の目的を明確にする
レガシーシステムの刷新では、単に古い技術を新しくするだけでなく、保守費用の削減、業務効率の向上、セキュリティの強化など、具体的な目的を設定しましょう。
目的が明確になれば、必要な機能と優先順位を判断しやすくなります。結果として、不要な開発を避け、費用を適切に配分できます。
一度にすべてを刷新しない
大規模なシステムを一度に刷新すると、開発範囲が広がり、問題が発生した際の影響も大きくなります。
そこで、業務への影響やシステムの重要度に応じて、優先度の高い機能から段階的に移行する方法も検討しましょう。
段階的な移行であれば、各工程で得られた知見を次の工程に反映できます。ただし、新旧システムが並行して稼働する期間は、データ連携や運用管理が複雑になるため、その負担もあらかじめ考慮する必要があります。
ベンダーの選定基準を明確にする
システム移行を外部のベンダーに依頼する場合は、見積金額だけでなく、レガシーシステムの移行実績や技術力、リスク管理の体制も確認しましょう。
見積もりを比較する際には、現状調査やテスト、データ移行、移行後の支援がどこまで含まれているかを確認することが重要です。
また、障害発生時の対応範囲や追加費用の条件、納品後の保守体制なども契約前に明確にしておくことで、予期しないトラブルを防ぎやすくなります。
まとめ
いかがでしたか。本日はレガシーシステムの刷新費用についてと失敗しないポイントについて紹介していきました。
レガシーシステムの刷新費用は、対象となるシステムの規模や複雑さ、移行方式によって大きく異なります。
また、レガシーシステムの移行には、データの欠損やシステム障害、業務停止、予算超過といったリスクがあります。こうした問題を防ぐためには、事前の現状調査やリスク評価、十分なテスト、移行リハーサル、バックアップ体制の整備が欠かせません。
システム移行の費用相場だけで判断するのではなく、移行後の運用まで見据えて計画を立てることが、レガシーシステム刷新を成功させるための重要なポイントです。