ベトナム情報

ベトナム政府の30歳までの早期結婚と出産要請から見る、2030年に向けたベトナムの労働力計画と状況

はじめに

こんにちは!

日本の社会と比べると、ベトナムは「若年齢社会」と言われるかもしれません。

ベトナムで道を歩く時は子供や20代の若者をよく見かけると思います。しかし、実際はUNFPA(国際連合人口基金)の調査データによると、ベトナムは2017年に高齢化社会に突入したと見られるとのことです。

最近では、ベトナム政府が国民に対して「30歳までの早期結婚と出産」を要請しました。

本記事では、その決定の詳細な情報についてご紹介したいと思います。さらに、そうした要請から見えてくる、2030年に向けたベトナムの労働力計画と状況についても書かせていただきます。

ベトナム政府の30歳までの早期結婚と出産要請・協力について

今年4月28日にベトナム政府は、決定588号を公開し、「2030年までの地域・対象別の出産率調整計画」を承認しました。今回の決定によると、2030年までの人口戦略で掲げた以下3つの目標の達成を目指します。

・出生率が低水準と評価された地方(出産可能年齢の女性一人あたり子供の平均数:2人未満)に対して、合計特殊出生率を10%増加させる

・出生率が高水準と評価された地方(出産可能年齢の女性一人あたり子供の平均数: 2.2人超え)に対して、合計特殊出生率を10%減少させる

・出生率が代替出生率(長期的に現在の人口規模を維持できる出生率)水準と評価された地方(出産可能年齢の女性一人あたり子供の平均数:2~2.2人)に対して、そのまま現状維持を掲げる

上述の目標を実現する為、グエン・スアン・フック首相は各地方のリーダーに少子化から代替出生に転換するように強化を要求しました。そこで、早期結婚・出産について宣伝すると共に、支援・奨励策を検討するとしました。また、結婚前のコンサルティングサービス、合コンの活動、結婚前の健康相談のサービスなどを試験的に実施することが指示されました。

それに加えて、30歳前に結婚する男女や、35歳前に二人目を出産する女性に対して、支援・奨励策として:

・母子健康のため妊娠・出産ケアや、子育ての支援や、出産後の職場復帰の制度や、個人所得税の減税や、世帯による公益負担の削減・免除など

・社会住宅の賃貸・購入の支援や、公立学校への優先入学や、育児費の補助など。逆に、未婚者・晩婚者に対する社会貢献の責任を増やすこと

を実施するように提案しました。

一方で、代替出生を維持する方針に沿わない規制、特に人口対策の違反行為に対して処罰規制の改正も提案しました。

なぜベトナム政府が早期結婚と出産を呼び掛けたのか

ベトナム総統計局の2019年の国勢調査のデータによると、ベトナムの人口は約 9620万人で、東南アジア諸国の中で3番目、世界中で15番目の多さでした。その中で、労働年齢人口(25〜59歳)は88%に達しましたが、65歳以上人口の割合が最も増加しています。さらに、出生率が 一人の女性あたり2.09人で、代替出生率水準より低くなっているとのことです。そして、専門家によると、急速に高齢化が進み、2030年までに労働年齢人口が不足すると予測されているのです。

それを主因として、ベトナム政府は労働年齢人口の増加を促進するため、国民に対する早期結婚と出産を呼び掛けたということです。

2030年に向けたベトナムの労働力状況・計画

ベトナム労働力状況について

ベトナム総統計局の国勢調査のデータ(2019年)によると、15歳以上の労働人口が  55.16万人で、その中で農林水産の業界が 38.6%を占め、産業・建設の業界が 26.7%を占め、サービス業が 34.7%に至っているようです。ベトナムの労働力の特徴として豊かな若い労働力で比較的安価が挙げられます。その点が、他の国と比べて競争力を持つと言えると思います。また、国内の労働力以外でもベトナムは海外に労働者力輸出を行っています。ベトナム外務省の派遣労働者の推移について調査データ(2017年)に基づきベトナム人労働者の主な受け入れ先は日本、韓国、台湾、マレーシアであり、ベトナム人労働者の数が年13万人を超えると見られます。

※日本でベトナム人労働者の状況についてこちらで詳細情報をご覧ください!

日本のベトナム人労働者数は40万人超、国籍別では第2位で、増加率はトップ

2030年に向けたベトナム労働力計画について

2030年に向けたベトナム労働力の戦略によると、労働市場と国内・海外の企業の要求を満たす為、ベトナム政府は3つ業界に関して人材育成を優先的に注目するということです。

・製造業

・電子・通信業

・新エネルギー・再生可能エネルギー業

それに加えて、様々な地方に支援産業クラスターを構成することが決定されました。

さらに、以下にベトナム政府の4つの計画があります。

・教育の方法を見直し、人材育成の質を向上させる

・労働者の能力について評価基準を作成し、上記の3つの業界の人材育成に注力する

・人材育成を計画する

・日本、韓国などと協力を続け、ODAのプロジェクトを実施する

まとめ

今回の決定には様々な意見が出されており、2050年までにベトナムの出生率が 2.3~2.5に至ると予測する意見もあります。現在のベトナムの強みである海外への労働力提供を継続できるように、今回の人口戦略が効果を発揮することが期待されています。

Hungtv

Recent Posts

TQA(技術品質保証)とは? 開発プロセスにおけるその役割と導入メリット

ソフトウェア開発において、品質の確保はプロジェクト成功の最重要テーマの一つです。 市場のニーズは高度化し、リリースサイクルは短期化し、開発チームの構成は複雑化しています。このような状況の中で注目されているのが TQA(Technical Quality Assurance:技術品質保証) です。 TQAは従来のQAと異なり、単にテスト工程で不具合を検出するだけではなく、開発工程全体の技術的な品質を可視化し改善するという役割を担います。 この記事では、TQAとは何か、その役割から導入メリットまで詳しく解説します。 TQAが気になる方 TQAの開発プロセスが気になる方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばTQAとは何かがわかるのはもちろん、導入メリットもわかりますよ。 TQA(技術品質保証)とは? TQAとは、技術的視点から開発プロセス全体の品質を管理・保証する取り組みを指します。従来のQA(Quality Assurance)が主に「プロセス管理」や「テスト計画・品質基準の策定」を担当していたのに対し、TQAはさらに踏み込んで、…

3 days ago

プロジェクト品質管理サービスとは?重要性とプロセスを解説

近年、システム開発・建設・製造・マーケティングなど、あらゆる分野でプロジェクトの複雑化が進んでいます。 市場の変化は速く、顧客の期待値も高まり続けるなか、企業に求められるのは「限られたコストと期間で、高い品質を確保した成果物を提供すること」です。 しかし実際には、品質のばらつき、手戻り、要件の理解不足、工程管理の不徹底などにより、多くのプロジェクトが計画どおりに進まず、結果的にコスト増や納期遅延という課題を抱えています。 こうした背景から注目されているのが プロジェクト品質管理サービス です。専門家による品質管理プロセスの整備・運用支援を通じて、プロジェクト全体の成功確率を高めるサービスとして、大企業から中小企業まで導入が広がっています。 この記事では、プロジェクト品質管理サービスの概要、必要性、導入メリット、サービス内容、実際の運用プロセスまでを詳しく解説します。 品質管理にお悩みの方 プロジェクト品質管理システムに興味がある方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事になっています。これを読めば、品質問題で悩んでいる組織やプロジェクトリーダーにとって、具体的な改善ヒントとなる内容がわかりますよ。 プロジェクト品質管理サービスとは? プロジェクト品質管理サービスとは、外部の専門チームやコンサルタントが、企業のプロジェクトにおける品質管理プロセスを整備し、品質向上やリスク低減を支援するサービスです。主に以下のような内容が提供されます。 品質基準・品質計画の策定 プロジェクト管理プロセスの構築・改善…

1 week ago

生成AIチャットボットは?従来のチャットボットの違い

近年、企業や教育機関、自治体を中心に「生成AIチャットボット」の導入が一気に広がっています。 ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)が急速に発展したことで、これまでのチャットボットでは実現できなかった高度な対話や柔軟な問題解決が可能になりました。 しかし、「生成AIチャットボット」と「従来型のチャットボット」は何が違うのか、具体的に説明できる人は意外と多くありません。 本記事では、両者の仕組みや特性、メリット・デメリット、そして導入時のポイントまで分かりやすく解説しています。 生成AIに興味がある方 チャットボットを導入したい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めば生成AIチャットボットが、従来と比べてどう違うのかが丸わかりですよ。 チャットボットとは何か? チャットボットとは、ユーザーとの会話を自動で行うプログラムのことです。 ウェブサイトの問い合わせ窓口やアプリ内のサポート、コールセンターの一次対応など、さまざまな場所で活用されています。 従来のチャットボットは、多くの場合「ルールベース型」「FAQ型」「シナリオ型」と呼ばれる仕組みで動いていました。 これは、あらかじめ作成された回答やシナリオに沿って、決められたパターンの会話を実行する仕組みです。 一方、生成AIチャットボットは、文章を理解し、新たな文章を自動生成する能力を持つ「大規模言語モデル(LLM)」によって動作します。 これにより、従来型とはまったく異なる会話体験を提供できるようになりました。…

2 weeks ago

AI活用でコーディングが効率化し、開発のスピード3倍アップ

いま、ソフトウェア開発の現場で“静かな革命”が起きています。それは、AIがエンジニアの相棒としてコーディングを支援する時代の到来です。 「AIがコードを書くなんて、まだ先の話」と思われていたのはもう過去のこと。今ではAIが自然言語での指示を理解し、数秒でプログラムを提案・修正してくれるのが当たり前になりました。 その結果、開発スピードが従来の3倍に向上したという事例も続々と報告されています。 この記事では、AIがどのようにしてコーディングを効率化し、開発現場を変えているのかを具体的に解説します。 開発をしたい方 コーディングの効率を上げたい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばコーディングにAIを活用する方法が丸わかりですよ。 コーディング現場の課題と限界 ソフトウェア開発の現場では、長年にわたって「納期の短縮」「品質の維持」「コスト削減」という三大課題がエンジニアを悩ませてきました。 近年では、ビジネス環境の変化がますます激しくなり、リリースサイクルの短期化が当たり前になっています。 特にWebサービスやモバイルアプリ開発の世界では、「スピードこそ競争力」と言われるほど、開発速度が事業の成否を左右します。 しかし、スピードを優先すれば品質が犠牲になり、品質を重視すれば納期が延びる――このジレンマに多くの開発チームが直面してきました。 加えて、エンジニアの人手不足は深刻であり、教育やナレッジ共有に割く時間も限られています。 限られたリソースでいかに生産性を高めるかが、開発現場における共通のテーマとなっています。…

2 weeks ago

要件定義フェーズをAI活用で解決する7つの問題と解決案

システム開発において最も重要であり、同時に最も難しい工程は何でしょうか。 多くのプロジェクトで共通して挙げられるのが 「要件定義」 です。 要求が曖昧なままプロジェクトが進むと、後工程での手戻りが一気に増え、QCD(品質・コスト・納期)は簡単に崩壊します。 実際に、プロジェクトが失敗する原因の6〜7割は、この初期工程である要件定義に起因すると言われています。それほど、要件定義は重要かつリスクの高いフェーズなのです。 しかし近年、AI技術の急速な進化により、従来の要件定義で「時間がかかる」「認識が揃わない」「情報が不足している」といった課題に対し、新たな解決策が生まれています。 この記事では、要件定義フェーズで頻発する7つの課題を取り上げ、それらをAIを活用してどのように改善できるのかを、具体例を交えて解説します。 要件定義フェーズでお悩みの方 AIを活用して開発効率を上げたい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めば要件定義で起こりうる問題とそれを解決する方法がわかりますよ。 問題1:要求が曖昧で担当者ごとに認識がズレる 要件定義で最初に直面する課題が「要求の曖昧さ」です。 ユーザー自身が課題を把握していても、機能としてどのように落とし込むべきか正確に説明できないケースは非常に多いです。…

3 weeks ago

システム開発のQCDは?プロジェクト管理を最適化

システム開発の現場では、「納期が守れない」「コストが膨らむ」「品質にばらつきがある」といった課題が常に発生します。 こうした問題の根底にあるのが、QCD(Quality・Cost・Delivery)のバランスです。 QCDは製造業を中心に使われてきた概念ですが、現在ではシステム開発やITプロジェクトの世界でも不可欠な管理指標として定着しています。 この記事では、QCDの意味とそれぞれの要素がプロジェクトに与える影響、さらに現代的な最適化の方法までを詳しく解説します。 システム開発を行いたい方 QCDについて知りたい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばシステム開発のQCDについて丸わかりですよ。 (more…)

1 month ago