ベトナム経済

ベトナムでのビジネス環境について

はじめに

まだまだ伸びるベトナム経済。

好調な製造業が市場を引っ張り、昨年のGDP成長率は7.1%と、とても高い水準にあります。

今後ますます、日系企業の進出も盛んになるでしょう。

筆者はある製造メーカーの現地責任者として、ベトナムのホーチミンに駐在経験があります。

その経験を踏まえ、ベトナムでのビジネス環境についてお話していきたいと思います。

ビジネス環境基礎ランキング

世界銀行が発表した最新の「ビジネス環境ランキング」を見ると、ベトナムは世界約190ケ国中70番目と、意外に下位に位置しています。

例えば、ASEAN地域でみると、シンガポールが2位、マレーシア(現在筆者はKL在住です)が12位、タイが21位、などといった主要ASEAN国のランキングに比べると、見劣りします。

これは筆者の実感からすると、かなり意外な結果です。

ただ、輸出入の利便性ランキングでは、それぞれ10位、7位と、高位置につけています。

この数値は、ベトナムの優位性を端的に示しているといっていいでしょう。

例えば、マレーシアでは取扱い商品に対する輸入時の検査が非常に厳しく、なかなか事業を始めるのが大変です。

結局のところ、現地で生産・販売をするにしても、部材を現地調達しない限り、輸出入が大きなポイントとなるため、ベトナムの優位性は高いと考えられます。

地理的・移動インフラの利便性

客観的ランキングデータの他に、身近なそれぞれのテーマについてみていきましょう。

まずは地理的環境です。

ベトナムは南北に長い国で、ハノイ(北)とホーチミン(南)は飛行機で2時間の距離です。

また、日本へはそれぞれ直行便があり、毎日運行されています。6-7時間の移動時間で、日本との時差はマイナス2時間です。

これは、他のアセアン主要国とそれほど大きな差異はありませんが、域内のどの国へも概ね2時間程度で移動可能であり、移動インフラの問題点は全くありません。

また、ハノイもホーチミンも交通網は車が主軸で、移動手段は車となります。

かなりの渋滞もありますが、これも他のアセアン地域と比べても酷いものではありません。

渋滞で悩まされるタイやインドネシアに比べれば、むしろ快適といえるでしょう。

文化や民族

ベトナムは、例のベトナム戦争の名残を水面下で感じる国です。

かつてフランスの植民地だったこともあり、ホーチミンの市街地は素晴らしいフランス建築で溢れており、世界中から毎日、多くの観光客が訪れます。

食事も、「バインミー」と呼ばれる、フランスパンに食材を詰め込んで食べる、地元のファストフードは大人気ですし、フォーという、米から作る麺は代表的食材ですね。

筆者も大好きで、堪能しました。

ハノイは政治都市で、中国の影響が大きいですが、ホーチミンはかつてのサイゴンで、非常に活気溢れる商都であり、また国際都市です。

ビジネスの中心もホーチミンです。

多くのアセアン地域と同様、ベトナムは親日国で、日本人に対する感情は非常に良好です。

現地の人々も非常に人懐っこく、英語が全く出来ない(歴史的な社会主義国家の流れですね)のが痛いですが、筆談やボディランゲージで何とか意思疎通が図れます。

また、労働力としても人件費は徐々に高騰していますが、シンガポールは別格として、マレーシアなどに比べるとまだまだ安いですから、人材の確保もそれほどネックにはなりません。

日系企業の進出とビジネスについて

筆者が所属する企業も3年ほど前にホーチミンに進出したのですが、現地でビジネスを進める上での留意点とすれば、やはり就労VISAの問題でしょうか。

ベトナムも他のアセアン諸国同様、自国民の労働環境保護を優先しているため、他国からの就労者に対するVISA発給の審査は厳しいです。

単純に言えば、新卒から3年以内での社員に対する発給は基本的にNGです。

その他、個別具体的な難易度がありますが、こちらについては別途お話していきたいと思います。

遵守すべき法制事項をクリアすれば、既に数千社にも上る日系企業が進出しているベトナム社会です。

日本人コミュニティも発達していますし、衣食住あらゆる面で不自由はありません。

オフタイム

仕事で頑張った後は、気分転換ですね。

特にホーチミンは大商都ですから、「ヘム」と言われる日本人街が市内の中心地にあり、多くの日本食店で賑わっています。

寿司、刺身、ラーメン、居酒屋、とんかつ、焼酎、などなど・・・。

また、近隣に格安のゴルフコースもあり、土日やオフには心身ともにリフレッシュする機会もたくさんあるので、まったく問題ありません。

マッサージやスパなどで、のんびりと疲れを癒すのもよいでしょう。

それなりに医療施設も整っているので、ライフラインも心配ありません。

まとめ

成長著しく、また元気な国、ベトナム。

みてきたように、特に日系企業がベトナムでビジネスを展開するには、良好な環境だといって間違いありません。

人口も9,554万人もいて、大市場を形成しています。

また、ベトナムは食材の宝庫です。

豊かな食材とフレンドリーな国民に接しながら、現地でのビジネスを展開するのも、人生にとって非常に意義深いものと実感しています。

著者プロフィール

ペンネーム:トビウオ

マレーシア(KL)在住 海外経験はこの他にヤンゴン(2回)、ホーチミン、海外40都市への出張経験があります。

早稲田大学政治経済学部卒業 大手通信会社~大手調査会社のヘッド~ITベンダー等を経験しています。

Van Nguyen

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