コラム

日本のテレワーク事情 ~東京オリンピックで加速する?~

「テレワーク」は日本テレワーク協会による『情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと』と定義されています。

また働き方によって3つに分類されます。

・自宅利用型(いわゆる在宅勤務)

・施設利用型(サテライトオフィス)

・モバイルワーク(顧客先や移動中など)

会社の業種・業態や方針、あるいは従業員のライフスタイルや家庭環境などによってどのテレワークなら導入できるか、自社に合っているかを慎重に検討し時間をかけて準備をする必要があります。そのため企業にとってテレワークの導入には手間や時間、費用がかかる大きなプロジェクトとなります。

日本と世界のテレワーク事情

世界各国のテレワーク導入企業の割合は圧倒的に欧米が高くなっています。アジア圏はまだまだ低い傾向です。やはりテレワークに対する考え方が国の文化、ビジネススタイルなどによって異なることが考えられます。日本では「顔を合わせて仕事をするのが当たり前」「出勤しないで本当に仕事をするのか?」など会社側の考えと「満員電車での通勤がつらい」「子育て中なので家で仕事がしたい」といった従業員側の考えがあり、双方にとってのメリットが見出だせていないことが多い印象です。

しかしそんな日本にとってここ数年でテレワークの普及を加速させる3つの要素があります。

①災害

地震、台風、大雪など交通網の麻痺や被害を受け出勤ができなくなる事例が多く発生してしまいました。さらに新型肺炎やインフルエンザの流行などもあり、不安を抱えながら人混みを通っての出勤は避けたい方も多いでしょう。しかしテレワークが導入されていれば休職などにならず、会社側も事業所の一時閉鎖などにならず業務を行える可能性があります。

②働き方の多様化

共働き世帯が増えたり、家族での介護が必要になったり、自分・自分の家族に合う働き方を選択したいという考え方が多くなってきています。子供の世話や家族の世話をしなければならない人でもテレワークを活用することで仕事と家庭の両立がしやすくなります。

③2020東京オリンピック・パラリンピック開催

東京オリンピック・パラリンピックの開催期間中、およそ4,000万人が日本に来日すると予想されています。とても楽しみなイベントではありますが、出場選手・スタッフ・マスコミ・応援団・観光客などが東京周辺で毎日大移動をすれば、いつもの電車に乗れない、道路が大渋滞、事故やトラブルが増えるなど日常生活に支障が出ます。そこで「自宅で業務ができたら大変な移動を回避して通常業務ができる」と考え政府が中心となりテレワークを普及・導入させようとしています。

テレワーク導入で気をつけること

以上の3つの要素を考えればテレワークを導入しない理由はないと思ってしまいそうですが、導入には注意点があります。

①セキュリティ

事業所以外で機密情報を扱うため、情報漏えい等が起こらないようルールの厳守が必須となります。さらに会社ではなく自宅用や外出先の無料Wi-Fiスポットなどではセキュリティが万全ではなく、悪意のある侵入者によって情報を盗まれてしまう可能性があります。

確実に会社・情報を守るためのセキュリティ構築が最重要課題となります。

②ルール作りと導入コスト

通常出勤の従業員とテレワーク中心の従業員では出勤状況の記録の仕方や交通費、残業の扱いなどさまざまな条件が異なります。業務のクオリティを落とさず、従業員の士気を落とさず、さらに働きやすい環境を提供するという大変難しい課題があります。連絡が取りやすいメッセージ・チャットツールや遠隔地との会議ができるシステム、クラウド上の情報に時間や場所を問わずアクセスできるソフトウェア、遠隔地でもスムーズに業務が行える端末やネット環境の整備など、設備投資にも費用がかかります。

以上の注意点をクリアできればテレワークによって会社にとっても従業員にとっても大きな変革がもたらされるのは間違いありません。

テレワークの導入は管理本部や情報システム担当部署が推進を進めるだけではなく、全部署・従業員が一眼となって準備をし、導入のメリットを理解し、進めていく必要があります。東京オリンピック・パラリンピックが終わってもテレワークは継続し、働き方改革の推進や業務効率の向上が加速することにより日本全体がよい方向に変化していけば交流のある海外の国々にもよい影響になれば各国の経済も盛り上がるのではないかと考えています。



著者プロフィール
ペンネーム
中邨家大之助
プロフィール
日本国内のソフトウェアベンダーで販売促進・データ分析に従事しながらWebライターとして活動中。
いつか家族でベトナム旅行をするのが夢。
趣味はバンド活動・登山。

Van Nguyen

Recent Posts

オフショア開発におけるテスターの役割?QAとQCの違い

オフショア開発では異なる国や地域のチームと開発を行うため、コニュニケーションロスによる品質力の低下が問題視されがちです。 そこでテスターという存在が質を確保する上で重要な役割を果たします。この記事ではそんなオフショア開発におけるテスターの役割について解説していきます。 オフショア開発に興味がある方 開発効率を上げたい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばオフショア開発におけるテスターがどんなメリットをもたらすのかや、QAとQCの違いについても丸わかりですよ。 (more…)

4 days ago

生成AI活用で社内業務システム効率化のメリットや注意点

企業が競争力を維持し、業務効率を高めるために、AI(人工知能)の導入はますます重要になっています。 特に、生成AIを活用した社内業務システムの効率化は、企業の成長を促進する大きな要因となり得ます。 この記事では、生成AIを導入することによるメリットや、導入時に注意すべき点について詳しく解説します。 生成AIを活用して業務効率化を図りたい方 社内のIT人材が不足している方 生成AIの使い方を知りたい方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めば生成AI活用を活用するメリットや気をつけるべきことが丸わかりですよ。 (more…)

1 week ago

【2024年版】ベトナムでERPシステム市場の現在・展望

ベトナムにおけるERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)システム市場は、近年急速な成長を遂げています。 この急速な市場拡大は、デジタルトランスフォーメーションの推進、クラウドERPの普及、中小企業のニーズの高まりなど、さまざまな要因によって支えられています。 この記事では、ベトナムでのERP市場の現状と今後の展望について詳しく見ていきます。 ベトナムでのERP市場の現状について知りたい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばERPシステム市場 の今後の展望が丸わかりですよ。 (more…)

2 weeks ago

AI技術を活用してデータドリブン経営を支援

データドリブン経営が成功するためには、膨大なデータを効果的に分析し、価値あるインサイトを引き出すことが重要です。 AI技術は、これを実現する強力なツールとして注目されています。 この記事では、AIがデータドリブン経営を支援する具体的な方法を紹介します。 データドリブン経営に興味がある方 データドリブン経営×AIの方法を知りたい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばAIを活用したデータドリブン経営の方法が丸わかりですよ。 (more…)

2 weeks ago

データドリブン経営とは?DX推進でメリット、成功ポイントや注意点

デジタル変革(DX)が進む現代、企業経営において「データドリブン経営」の重要性がますます高まっています。 データドリブン経営とは、企業の意思決定や戦略立案をデータに基づいて行う経営手法です。 この記事では、データドリブン経営の概要、DX推進におけるメリット、成功のためのポイント、そして注意すべき点について解説します。 データドリブン経営に興味がある方 DX化をすすめている企業の方々 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばデータドリブン経営がどういうものなのかや、データドリブン経営を成功させるためのポイントが丸わかりですよ。 (more…)

2 weeks ago

【2024年版】ベトナムのDX市場の状況と動向

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業や国の競争力を左右する重要な要素となっています。 特にベトナムは、急速な経済成長とテクノロジーの革新により、東南アジアの中で注目される存在です。 この記事では、そんなベトナムのDX市場の現状と今後の動向について、具体的なデータとトレンドを基に詳しく探っていきます。 ベトナムDX市場に興味がある方 社内のIT人材が不足している方 オフショア開発に興味がある方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばベトナムのDX市場の状況やトレンドについて丸わかりですよ。 (more…)

3 weeks ago