コラム

日本のベトナム人労働者数は40万人超、国籍別では第2位で、増加率はトップ


はじめに

先日、厚生労働省(日本)は、2019年10月末における外国人雇用届出状況を公表しました。

それによれば、日本でのベトナム人労働者数は40万1,326人で、最も多い中国に次ぐ第2位であり、増加率をみると、前年同期比では+26.8%増と、最大の伸び率を示しています。

これについてみていきましょう。

今回公表の概要

日本におけるベトナム人労働者数は、2012年の2万6,828人から昨年まで、20倍近くまで増加しています。

全国における外国人労働者数の状況をみると、前年同期比+13.6%増の165万8,804人で、外国人労働者を雇用する事業所数は、同+12.1%増の24万2,608か所となっています。

いずれも、2007年に届出が義務化されて以来、過去最高の数値を更新しています。

国籍別に見ると、ベトナム人労働者は、外国人労働者数全体の24.2%に当たる40万1,326人で、中国人の41万8,327人(全体の25.2%)に次いで第二位となりました。

これに続くのは、フィリピン:17万9685人(同10.8%)、ブラジル:13万5455人(同8.2%)、ネパール:9万1770人(同5.5%)などとなっています。

そして、労働者の増加率についてみると、ベトナムが+26.7%増で、インドネシアの+23.4%増、ネパールの+12.5%増を抜いて、トップになりました。

経済成長が続き、また日本で就労することを憧れ、目標とするベトナム人が多数いること、そしてそれを支援する教育機関などもまた充実・拡充している背景もあり、また、日越政府間の緊密な連携なども追い風となり、こうした最近のベトナム人労働者の増大に寄与していると考えられます。

ベトナム人労働者の状況

ベトナム人労働者について、それぞれの在留資格別にみると、次のようになっています。

・技能実習:19万3,912人(全体の48.3%)、

・資格外活動:13万7,410人(同34.2%)(うち留学13万0893人)、

・専門的・技術的分野の在留資格:4万9,159人(同12.2%)

・身分に基づく在留資格(永住者、日本人配偶者など):1万4,646人(同3.6%)

・その他(特定活動など):6,199人

こちらも政府や制度改定の後押し、また企業ニーズの高まりを反映し、技能実習生が全体の約半数と、大きな比重を占めていることがわかります。

更に、一定時間内であれば国内で就労(アルバイトなど)が認められている留学生の増大も注目されるとことでしょう。

就労先を産業別にみると、次のような状況です。

・製造業:14万7,143人(全体の36.7%)

・宿泊業・飲食サービス業:5万8,360人(同14.5%)

・サービス業:5万2,286人(同13.0%)

・建設業:4万6,783人(同11.7%)

・卸売業・小売業:4万3,086人(同10.7%)

・医療・福祉:4,926人(同1.2%)

・情報通信業:4,645人(同1.2%)

・教育・学習支援業:1,627人(同0.4%)

やはり、ベトナム現地でも日系企業の進出を牽引している製造業の比率が最も高く、また、日本で就労する外国人などの対応も含めた宿泊業や、留学生アルバイトによる、コンビニ店員などの飲食サービス業などへの就労が目立ちます。

厚生労働省でも、こうしたベトナム人労働者の増大の要因について、前述したとおり、政府が推進している高度外国人材や留学生の受け入れが進んでいることや、雇用情勢の改善が着実に進んでいることが背景として挙げられると分析しています。

それにより、永住者や日本人の配偶者といった、身分に基づく在留資格の外国人の就労が増えていること、そして技能実習制度の活用により、技能実習生の受け入れが進んでいることなどを挙げています。

こうした見方は、ホーチミン在住経験のある筆者の目からみても、妥当な分析だと思われます。

ベトナム人労働者受け入れに際しての注意点

増加の一途を辿るベトナム人労働者ですが、ただ単に就労すればよいという安易なものではありません。

これまでに様々な問題を指摘されてきた、ベトナム人をはじめとする、外国人労働者を受け入れる際の注意点について、簡単にみていきましょう。

まず、彼らが就労に当たって抱く様々な不安要素を、事前に丁寧に説明することで払拭する必要があります。

「言葉はちゃんと通じて理解できるだろうか」「文化の違いは克服できるだろうか」などといった不安に対応し、納得を得るための配慮が大切です。

また、スムースに就労し、技能を修得するため、業務上のマニュアルや研修制度を充実させることも必要です。

日本語が第一外国語になっているほど日本語教育に熱心なベトナムですが、日本語の習得度合いには個人差があるため、日本語についていけない人も出てきます。

日本語習得に関するマニュアルや、研修制度を整備しておくことも大切です。

また、業務上の内容だけでなく、日本で生活する上でのノウハウや考え方などについて、細部までガイドラインを設定しておくと、ベトナム人が日本で働きはじめたときのギャップと不安を軽減することができます。

住居探しや役所の手続きへの同行、近隣の地理や周辺環境の案内など、受け入れのためにしっかり体制を整え、細かな部分までサポートできるようにしたいものです。

まとめ

みてきたように、ベトナム人労働者の国内での数は年々、著しい増加傾向にあり、今後もしばらくは継続するものと考えられます。

親日国であり、日本文化への憧れも強く、希望に溢れて来日し、就労する彼らベトナム人ですが、その一方、これまで、仕事上や生活上の様々なトラブルや問題点も指摘されてきました。

今後ますます国際化が進展する労働市場環境にあって、彼ら外国人就労者が、周囲の丁寧な対応と、支援体制の強化により、楽しく穏やかに就労・生活できるよう、協力していきたいものです。

著者プロフィール
ペンネーム:トビウオ
マレーシア(KL)在住 海外経験はこの他にヤンゴン(2回)、ホーチミン、海外40都市への出張経験があります。
早稲田大学政治経済学部卒業 大手通信会社~大手調査会社のヘッド~ITベンダー等を経験しています。

Van Nguyen

Recent Posts

Microsoft PowerAppsを活用してローコードで業務アプリを簡単に開発

現代のビジネス環境では、迅速な意思決定と効率的な業務運営が求められます。その中で、企業の業務プロセスをデジタル化するために、カスタムアプリの開発が重要な役割を果たしています。 しかし、従来のアプリ開発は多くの時間とリソースを必要とし、専門的なプログラミングスキルを持つエンジニアが必要です。 この課題を解決する手段として注目されているのが、「ローコード」開発です。 この記事ではそんなローコード開発に関して、代表的なツールMicrosoft PowerAppsについて解説していきたいと思います。 Microsoft PowerAppsが気になっている方 ローコード開発を行いたい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばローコード開発で人気のMicrosoft PowerAppsについてその特徴が丸わかりですよ。 (more…)

3 days ago

オフショア開発におけるAI開発の実績まとめ

近年、AI技術の進展とともに、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が急務とされ、多くの企業がAIソリューションの開発を進めています。 オフショア開発におけるAIプロジェクトは、技術的な知見と効率的な体制が求められます。 この記事では、DEHAソリューションズでのAI開発事例について紹介し、それぞれのプロジェクトで実現されたユニークな機能や開発体制についてまとめます。 オフショア開発に興味がある方 AI開発を行いたい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばAI開発での具体的な事例が丸わかりですよ。 (more…)

4 days ago

ベトナム進出の日系製造業がDX化の今と今後|自動化による生産性向上

2024年現在、米中摩擦や新型コロナウイルスによるサプライチェーン混乱の影響を受け、製造業の生産拠点としてASEAN地域の需要が急速に増加しています。 その中でも特に注目されるのが、安価な労働力と豊富な人材を持つベトナムです。日系企業はこうした環境を活用し、積極的にベトナムへの進出を進めています。 しかし同時に、ASEAN域内では人件費上昇や人材確保の難しさといった課題も浮上しており、それに対応するために製造現場の自動化やDX化への関心が高まっています。 そこでここではそんなベトナムのDX化について、現状をお伝えしていきたいと思います。 ベトナム進出をお考えの方 ベトナムのDX化に興味がある方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばベトナム進出の日系企業のDX化の現状がわかるのはもちろん、今後の予測も分かりますよ。 (more…)

2 weeks ago

.NETでマイグレーション開発ならオフショアで

近年、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で、ITインフラの老朽化問題も無視できなくなってきました。 レガシーシステムから新しいプラットフォームへの移行、特に.NETなどの最新フレームワークを用いたマイグレーションは、ビジネスの成長に不可欠です。 しかし、こうしたマイグレーションにはコストやリソースの確保が難しいという課題も付きまといます。ここで注目されるのがオフショア開発の活用です。 この記事では、そんな.NETによるマイグレーション開発をオフショアで実施するメリットについて詳しく解説します。 オフショア開発に興味がある方 .NETでマイグレーション開発を行いたいとお考えの方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めば.NETでのマイグレーション開発をオフショア開発で行うメリットはもちろん、注意点なども丸わかりですよ。 (more…)

2 weeks ago

BIZASKとは?特徴と料金プランを徹底解説

近年、企業における生成AIの導入が進んでいますが、その中でも注目を集めるのがAIアシスタントです。 弊社のBIZASKは、OpenAIの技術を基盤にした法人向け生成AIチャットボットサービスで、企業の業務効率化を強力に支援します。 この記事では、BIZASKの特徴や料金プランについて詳しく解説します。 生成AIアシスタントサービスが気になる方 業務効率を上げたい方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばBIZASKの特徴が丸わかりですよ。 (more…)

3 weeks ago

クラウド型販売管理システム|導入メリットを徹底解説

クラウド型販売管理システムは、企業の販売プロセスを効率的に管理・最適化するためのソリューションで、クラウド上で提供されるのが特徴です。 従来のオンプレミス型システムとは異なり、初期投資を抑え、運用コストを削減しながらも、常に最新の機能とセキュリティ対策を利用できる点が魅力です。 この記事では、クラウド型販売管理システムのメリットと導入のポイントについて詳しく解説します。 クラウド型販売管理システムに興味がある方 販売業務を行なっている方 社内のIT人材が不足している方 これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばクラウド型販売管理システムに関して、そのメリットなども丸わかりですよ。 (more…)

4 weeks ago