発展を続けるベトナム経済とIT産業。
その中心を担うのは北の首都ハノイと南の大商都ホーチミンですが、その中間に位置する中堅都市・ダナンにおけるIT産業の発展が注目されています。
その理由と現状、また今後の課題などについてみていきましょう。
ダナンはハノイの南759km、ホーチミンの北960kmと、二大都市のほぼ中間に位置する、ベトナム中部最大の都市です。
地理的には西側を山に囲まれ、東側は南シナ海に面しています。
成田空港への直行便が毎日就航し、今年1月には日本領事事務所が開設されました。
日系企業を含む外資企業による有望な進出先としても人気は高まっており、最近の米中貿易摩擦によるベトナムへの生産移管の追い風や、ダナンでの豊富で安価な労働力や利便性、更には地理的優位性なども、高い評価の裏づけとなっています。
ダナンは以前、漁業、水産加工、縫製、建材製造、観光などが主要な産業で、地域の経済を支えていました。
港町でもあるダナンは、海産物に恵まれ、リゾートビーチなどの観光資源も豊富にあったため、昔からそれなりの存在感を示してきました。
ところが、ここ最近、2000年代に入ると、ダナンは急速にIT分野を発達させたのです。
その主な理由としては、次の3つが挙げられます。
1.政策上の積極的な支援:政府や行政、教育機関などが総力を結集し、積極的にIT系の人材を育成しました。
2.人件費の安さ:海外や同じベトナムの都市ハノイやホーチミンと比べても、人件費が安いことが発展に寄与しました。
3.低い離職率:ハノイやホーチミンなどでは離職率が高い中にあって、ダナンの離職率は格段に低いことが挙げられます。
こうした、政府や行政、教育機関などの支援や、安い人件費、更には安定した人材供給といった環境を活かして、海外企業のダナンへの進出も拡大しました。
かつての中国やインド、そしてハノイやホーチミンがIT産業の発展ステップを刻んだように、ダナンでも、オフショアを中心とするIT産業の拡大が進みました。
現在では、IT産業の新たな拠点としてその地位を確立しつつあります。
このように、現在ではすっかり定着したダナンのIT産業です。
ダナンには現在、約700社ものIT企業が進出しており、主な日系企業としては、富士通やNTTデータなどが挙げられます。
こうした大規模な企業もあれば、数十名単位で運営する中小規模のダナンのIT企業が、海外企業からの業務委託を受け、ソフトウェアの開発を行っています。
ベトナム最大手のIT企業として知られ、様々な評価やアワードを得ているFPT社は、2010年に約60億円程度だった売上げを、2018年には340億円まで成長させています。
同社のダナンにおける事例をみてみましょう。
FTPはダナンにも拠点を置き、ベトナム現地でのIT人材の積極的な採用や人材育成に力を入れています。
人材の採用時には、システムエンジニアとしての能力だけでなく、仕事に欠かせない語学力も必須で、入社後も人材教育プログラムによって高品質の仕事を実現しています。
同社のダナンの拠点は、2010年~2016年の間で、社員数は約10倍、売上高は約7倍と、急成長を遂げています。
ダナンには既に、ホアカイン(拡張含む)、ホアカム、リエンチエウエ、ダナン、そして水産加工の5つの工業団地があり、2010年以降、ダナン市と日本の大手商社や大企業などが協力して「ダナンハイテクパーク」という大規模な工業団地の建設を始めました。
ダナンハイテクパークは、入居企業に対して投資優遇制度などを設けるなどして、自国および海外からの進出企業を積極的に誘致しています。
ダナン市もまた、行政の立場から、ダナンでのIT系人材育成や、海外企業の参入を容易にする投資制度を展開し、地元のIT産業育成に注力しています。
こうして、現在ダナンは、行政や企業、教育機関などが一丸となって、IT都市としての発展を推し進めています。
政府や各機関の支援もあり、順調に成長してきたダナンのIT産業ですが、今後の課題も散見されます。
これについてみていきます。
まず指摘されるべきことは、現在のダナンのIT産業の内容をみると、多くのIT立国や都市が当初そうであったように、ダナンではオフショア以外の仕事がまだ多くないという現状です。
安価な人件費と低い離職率から、安定的にIT業務を供給できる優位性を持つ反面、オフショアの、しかも下流領域での仕事が中心のため、ダナンのIT技術者が自分たちで一からプロジェクトを企画し、開発するという能力はまだ十分育っていません。
そして、ダナンでのオフショア開発の現場を見ても、小規模の企業などではあまり語学が堪能でない技術者も多く、受注元である外資企業からの発注や要求意図を汲み取り、正確に理解し、反映するのは困難です。
オフショアに頼ったままでは、これ以上の自助努力による成長が大きく見込めない現状があります。
続いて、人件費の高騰も懸念材料として挙げられます。
かつて、中国でも、そしてハノイでもホーチミンでもそうであったように、ダナンでもご他聞に漏れず、経済成長と同時に人件費の高騰が始まっています。
オフショア開発のメリットのひとつが人件費の安さであることは言うまでもありません。
人件費が高騰することで、オフショアによる委託業務受注のメリットが縮小してしまうのは自明です。
先輩都市の例を見るまでもなく、今後ダナンでも、オフショア頼みではなく、企業が自ら作ったものを発信し、開発を進め、IT企業の業務内容が高度化・多様化していけば、ダナンはIT都市として、今後も更に発展が期待できるでしょう。
ダナン市は法人税が上がり続けているという現状に加え、今後もまたいつ上がるのか不透明という背景があり、こうした環境も課題といえます。
例えば、予告や準備期間のないまま、政府が急に法人税を上げたりすると、特に小規模な企業にとっては大打撃となります。
上に述べた、FPTのような大企業と、小規模な10人単位の企業を比較すると、体力差も大きく、対応できる仕事の質や量にも大きな差異が生じてしまいます。
中・小規模のIT企業を支援し、育成するという観点から、多くの企業が競い合いながらも協力し合って、ダナンでのIT産業全体の質を向上させていけるかどうかが、今後の長期的な成長と発展における大きな課題といえるでしょう。
みてきたように、ベトナム中部に位置し、地理的にも恵まれた環境にある中核都市・ダナンは、様々な課題を抱えながらも、現在までのIT産業の育成・発展を基盤として、今後もIT産業の更なる発展に向けて取り組んでいく思われます。
政府・行政や教育機関、各企業などの積極的な取り組みや、日系企業を含む諸外国からの支援、協力なども得ながら、ダナンでの今後ますますのIT産業の発展に期待したいものです。
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