ラボ型開発は、案件ベースではく人材ベースでシステム開発を発注する契約方法です。
発注前に要件をガチガチに固めたり追加開発ごとの見積調整が必要なく、チームにノウハウ蓄積をすることができるなど、さまざまなメリットがあります。
正規雇用と違って、リモートで人材確保するので、外注でチームビルディングする際にコストパフォーマンスが高い契約方法と言えるでしょう。
この記事ではそんなラボ型開発に関して、どんな特徴があるのか、メリットデメリットは何なのかなど解説していきます。
このような疑問を持っている方におすすめの記事になっています。
ラボ型開発(別名:ラボ型契約/ODC)とは、基本的にある 一定期間(半年〜1年)の間、お客様の専用のチームを用意し開発を行うという契約形態のことです。
ラボ型開発は、単純に開発を請け負うのではなく開発の修正も含めて行うため、「準委任型開発」とも呼ばれています。
一方で、一般的なオフショア開発は、請負型開発と呼ばれ、開発し納品までを1つのプロセスを行います。
請負型(一般的なオフショア開発) | 準委任(ラボ型開発) | |
開発費用 | 低い | 高め |
開発期間 | 短めの納期 | 長めの納期 |
開発の柔軟性 | 基本的には途中変更は行われない | 柔軟な対応をすることができる |
コミュニケーションの有無 | 基本的には、PMが開発チームとの直接コミュニケーションを取る場合が多い | ブリッジSEと呼ばれる、エンジニアがPMと開発チームとの橋渡し役となる |
請負型開発の場合は納品後に修正が必要な際に追加料金が必要なこともあり、コストが増えてしまいます。
一方で、ラボ型開発は期間内であれば、 随時修正依頼もでき、コストも抑えられやすいことが特徴です。
ラボ型開発のメリットは主に以下の4点です。
それぞれのメリットについて、解説していきます。
日本と比較すると、ベトナムでオフショア開発をした場合、約1/2 ~1/3 に人件費を抑えることができます。
さらに、ラボ型開発は期間内であれば、 途中でも仕様変更の対応ができます。受託開発の場合には発生する可能性がある仕様変更に伴う追加コストはかかりません。
修正が多いアプリ開発などでは、修正に追加費用がかかる請負型開発や国内の開発会社に委託するよりも、ラボ型開発のほうが低コストで済む場合が多いです。
国別のオフショア開発の特徴や費用はこちらの記事で詳しく紹介しています。「ベトナムのオフショア開発まとめ~メリットデメリット・費用・会社選び~」
開発を行う際に最も重要なのは、高度な開発力を持つエンジニアを安定的に確保することです。しかし、通常契約の場合は発注者が継続的に同じメンバーをアサインできるとは限りません。
エンジニア不足は日本の多くの開発現場で課題となっています。経済産業省によると2030年にはなんと最大で79万人のIT人材が不足すると言われています。
ラボ型開発では契約期間であれば優秀なエンジニアを確保し続けることができるため、持続的で安定した開発を実現できます。
特に、外国人エンジニアの中でも、ベトナムの人材が優秀といわれています。
詳しくはこちらの記事をご参考にしてください。
「ベトナムIT業界の20年以降の展望」「ベトナムIT人材の現状と特性」
ラボ型開発では、優秀なエンジニアを一定期間確保することできるため、技術的なノウハウを自社に蓄積しやすく、品質・スピード共に改善していくことが出来ます。
一般的な請負型開発では、完成品のみを納品されるため、自社に開発ノウハウを蓄積することができません。
一方、ラボ型開発ならノウハウを持つことでより効率的な開発をすすめることができます。長期間にわたって開発を行う場合は特に顕著に現れるでしょう。
自社に開発ノウハウが溜まっていない技術を使用する開発では、その分野に強いラボ型開発会社と協力しましょう。それにより、発注者側もノウハウを蓄積しやすい体制を構築することができます。
ラボ型開発は期間内であれば、途中で仕様変更を適宜行うことができます。企画や施策が固まりきっていないサービス開発やアプリ開発では仕様変更は当たり前です。
一般的な委託型開発では最初に設計した仕様書に合わせて人件費や設計費などを作成します。そのため、仕様の大幅な変更があると追加の費用などが必要になり、柔軟な変更に向いていません。
ラボ型開発では、長期間人材を固定して行うため、急な仕様の変更でも対応することができます。
さらに、開発管理の手法なども自由度の高い指示をすることができるので、ビジネスサイドに合わせた開発も行うことができるのです。
ラボ型開発には様々なメリットがある一方で、ラボ型開発には3つのデメリットがあります。
①開発チームの構築に時間がかかる
②短期の案件ではコストメリットが出しにくい
③開発を円滑に進めるための体制作りが必要
ラボ型開発で案件を委託する前に、デメリットを理解して対策を考えておきましょう。
一般的なオフショア開発の請負型開発に比べ、ラボ型開発は長期間の開発です。
そのため開発チームの構築が非常に重要になります。ラボ型開発では、開発の内容や自社の文化などを考慮し、分野に特化した人材をアサインでしてチームを構成します。
そこからチームでのマネジメントシステムの構築まで体制を整えて実際に開発に入るには、ラボ型開発に慣れている企業で0.5ヶ月~3ヶ月ほど期間が必要です。ラボ型開発の委託先を選定する際には、開発のスケジュールも考えて検討しましょう。
ラボ型開発は、開発チームを持つため、半年以上から数年以上の開発に適した開発方法です。
期間中は開発チームのリソースを無駄にしないように、一定量の発注をするプロジェクト、あるいは大規模な案件の保守が必要になってきます。
そのため、短期間の単発案件の場合には、逆に割高になりやすくコストメリットが出せないこともあります。
ラボ型開発を行う際には、発生するタスク、開発期間やコストメリットを、オフショア開発会社に確認しましょう。
リモートでの開発を円滑に進めるためには、開発環境の構築やテストの自動化等の仕組み作りが必要です。
オフショア開発では人件費以外にも環境構築にもコストが掛かります。環境構築にはある程度の時間を要することを覚悟しなくてはいけません。
開発分野に慣れていない会社や自社のみで環境構築を行うと現地のチームとのコミュニケーションに齟齬が生まれてしまうことがあります。
しかし、豊かな開発実績のある会社であれば経験とノウハウを持ってるため、仕組み作りをサポートしたり、アドバイスをすることが可能です。
実際にラボ型開発を委託する際には自社の開発分野に強い企業かどうかを確認しましょう。
ラボ型開発は「一定期間(半年〜1年)の間、お客さんの専用のチームを用意し開発を行う」開発方法です。
一般的な委託型開発とは性質が異なるため、柔軟性が高く、長期間の開発であるラボ型開発に向いていないプロジェクトもあります。
以下にそれぞれの開発を並べているので確認してみましょう。さらに実際に対応できるかどうかはオフショア開発会社に直接ヒアリングすることが一番です。
ラボ型開発は、ユーザーの動きに合わせた柔軟な仕様変更が必要なWEBサービスや、テストを数回繰り返す必要があるシステム開発などには適した開発です。
アジャイル開発とは、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていく開発方法です。
アジャイル開発のメリットは、ユーザの声を聞きながら開発をすすめ、必要であれば大胆に仕様を変更することができます。
一方で、デメリットは、仕様・要件ごとにスケジュールを設定して開発に臨むため、全体スケジュールのコントロールが難しいという点です。
タスクがある程度明確に決まっており、開発の手順が既に決まっている開発には、向いていない開発方法です。
ウォーターフォールは、システムの開発を「基本計画」「設計」「プログラミング」「テスト」という開発工程ごとに分けて、順に段階を経て行う方法です。
ウォーターフォール開発のメリットは、開発段階ごとの工程が明確で開発を管理しやすいことです。デメリットは、前の工程に戻ることができないため、ユーザの声に合わせた開発や素早い方向転換が難しい点になります。
ラボ型開発を委託する際に、どの国にオフショア開発を委託するのが良いのでしょうか。
近年、注目されているのがベトナムです。ベトナムは請負型のオフショア開発で注目されていますが、ラボ型開発の開発でも徐々に注目されています。
ベトナムの特徴は、国家レベルでエンジニアの育成に力を入れていることもあり、優秀なエンジニアが育成されている点です。
さらに、これまで日系の大手企業がオフショア開発の土壌を作っていることも大きな特徴です。日系企業とのコミュニケーションにも慣れているのでスムーズな開発を行うことができます。
オフショア開発国の中でも注目されているベトナムのオフショア開発の注意点や費用・他の国との比較については以下をご参考にしてください。
「【保存版】ベトナムのオフショア開発まとめ~メリットデメリット・費用・会社選び~」
ラボ型開発を活用して開発を進めた場合の開発費用について調べてみましょう。
数字は異なりますが、実際に弊社に相談に来られたお客様を例に計算してみましょう。
▼開発の背景
10年位前にスクラッチにて開発をしたレガシーシステムがあり、老朽化(よくシステムが落ちるそうで)に困っている。リプレースの検討したところ、エンジニア不足で、作業が止まっている。
今後の成長戦略から考えて4名のエンジニアの採用を目指しますが、日本人プログラマーを雇うと次のようなコストになります。
人数 | 月人単価 | 月額費用合計 | |
日本人エンジニア | 6 | 70万~ | 420万円~ |
日本人エンジニアで、6名のチームを維持すると以下の費用が必要です。
420×12ヶ月=5040万円
自社での開発であれば、コミュニケーションコストが低く、ある程度の開発能力を担保することができます。
人数 | 月人単価 | 月額費用合計 | |
ブリッジSE | 1 | 30万~ | 30万~ |
エンジニア | 3 | 25万~ | 75万~ |
翻訳者 | 1 | 20万~ | 20万~ |
ラボ型開発で6名のチームを維持すると、以下の費用が必要です。
125×12ヶ月=1500万円(日本での開発に比べて約70%削減)
ラボ型開発であれば、およそ70%の人件費を削減できます。
最後にラボ型開発を契約する際の注意点について解説していきます。ラボ型開発は長期的な開発であるため、会社選びに失敗できません。
ラボ型開発を考える際には以下の3点を確認しましょう。
そもそも、自社の開発したいシステムや、サービスがラボ型開発に適しているか考えましょう。
▼ラボ型開発に向いている開発内容
▼ラボ型開発に向いていない開発内容
より柔軟性が高く、長期間高度なエンジニアと安定的に開発ができるラボ型開発の強みを活かせる開発であるかを確認しておきましょう。
ラボ型開発は半年以上の長期の契約になる場合が多いです。そのためタスクが発生しないとエンジニアを活用しきれません。
効率的にエンジニアの活用を行うには、仕様の変更があったとしても、ブリッジSEとコミュニケーションをとり早めにタスクを振る必要があります。
仕様書設計の際にどのようなタスクが安定的に発生するかをラボ型開発の委託会社やブリッジSEと十分にすり合わせておきましょう。
ブリッジSEの概要については「【ベトナムオフショア開発】ブリッジSEの重要な役割について」で解説しています。
ラボ型開発などのオフショア開発で最も課題となるのは現地開発チームとのコミュニケーションです。
外国人エンジニアの働き方や、日本語であればなんとなく通じるはずのコミュニケーションが難しいため明確な指示を出す必要があります。
スピード感のある開発に信頼関係は欠かせません。お互いの文化を理解していく意識が必要です。
実際にラボ型開発のチームを構築する際には、自社との相性やブリッジSEとどれほど信頼関係を構築できるかなどもチェックしておきましょう。
さらに、エンジニアのスキルセットに関しては自社の開発についていける人材か、エンジニアの得意分野と自社の開発分野にミスマッチがないかも事前に確認しておくことでより失敗を避けることができます。
今回の記事では、ラボ型開発について網羅的に解説しました。ラボ型開発のポイントは以下の4つです。
ラボ型開発は長期間の開発のため委託会社の選定が非常に重要です。
開発がはじまってから後悔しないためにも最後に解説した会社選びのポイントやメリット・デメリットをよく理解しておくことをおすすめします。
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