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ベトナム人技能実習生の実態
2020/01/10
はじめに
近年、日本に在留するベトナム人は増加の一途をたどっています。
在留ベトナム人の多くを占めるのが、留学生と技能実習生です。
これは、日本政府の在留外国人受け入れ促進政策によるものですが、在留ベトナム人の増加に伴い、様々な問題点も浮き彫りになっています。
今回は、その中でも問題が深刻だといわれる、技能実習生の実態についてみていきましょう。
技能実習制度について
ベトナム人をはじめ、外国人在留者を受け入れる目的として制定された技能実習制度ですが、その概要についてみていきます。
外国人技能実習制度は、実は非常に新しい制度であり、2016年に制定され、2017年から施行されたものです。
この制度の元来の目的は、日本で学んだ技能や技術、知識を生かして、開発途上国の経済発展に貢献する人づくりに寄与する、国際協力となっています。
更に、ここが大事なポイントですが、技能実習制度の理念として「技能実習生が労働力の需要の調整の手段として使われてはならない」と明確に定めています。
この理念と実態が大きく乖離していることが問題なのです。
なお、外国人技能実習生が受け入れられる対象職種は、農業・漁業・建設・製造・繊維・衣服・機械・金属などに特定されています。
技能実習生の概況
日本は少子高齢化社会の一途をたどっており、近年では労働力不足が深刻な問題となっています。
そして、外国人技能実習生を受け入れる企業や団体などは、上述した対象職種をみても、日本人の労働力不足が極めて深刻な産業や職種が多いのが現実です。
日本人の若者が嫌がる、いわゆる「3K」職場が多いのです。
つまり、技能実習生は、開発途上国の経済発展に貢献する人づくり、という「建前」と、不足する現場労働力の補填という「現実」のギャップを抱えながら、その数を著しく増大させてきたといえるでしょう。
最近のデータでは、技能実習生の資格で日本にいる外国人は合計で36万7千人を上回っており、今年末には40万人を超えるといわれています。
その中でも、現地での給与水準の上昇などによって減少傾向にある中国人に代わり、ベトナム人技能実習生が13万4千人と、ダントツの1位を占めるようになっています。
若干数字データの時期が前後しますが、出身国別に見ると、1位のベトナムに続き、中国(7.5万人)、フィリピン(2.9万人)、インドネシア(2.3万人)、タイ(0.9万人)と続いています。
ベトナム人がいかに多数を占めているかがわかるデータです。
ベトナム人技能実習生の実態
圧倒的多数を占めるベトナム人技能実習生ですが、その実態はどうなのでしょうか。
政治・経済・文化など、日本と様々な側面で極めて良好な関係を構築しているベトナムは、技術実習生を「労働力輸出」と呼んで、日本への出稼ぎを奨励しています。
一方、実際に日本にやってくる技能実習生は、平均すると100万円以上も借金をしています。
このように、周囲からの支援と、希望や覚悟を持ってやってくる技能実習生ですが、現実には、非常に厳しく過酷な現実に直面している場合が多いようです。
ベトナム人技能実習生が実際に受け取る給料ですが、ある事例では、時給に換算すると、300円~400円程度というものがありました。
企業には、従業員へ支払う最低賃金の基準があるため、このような数字が事実だとすれば、違法性が疑われます。
なお、技能実習生を斡旋する業者が賃金の半額程度をいわゆる「ピンハネ」する実態についても指摘されています。
こうした低賃金に加え、劣悪な労働環境、さらに女性の場合は陰湿なセクハラ行為の被害も多数報告されています。
ベトナム人技能実習生の将来
みてきたように、多くの就労現場で過酷な労働を強いられ、違法ともみられる低賃金やセクハラ、いじめや搾取、といった環境を余儀なくされるベトナム技能実習生。
あまりの劣悪な環境に耐え切れず、失踪してしまう実習生も多数います。
一方、中には良心的で、十分な労働環境を提供しているまっとうな企業も多くあります。
そうした企業で働くベトナム人技能実習生は、少ない給料の中から、工面してベトナムにまとまったお金を仕送りする人もいます。
そして、彼らが技能実習期間(3年から5年に延長)を終え、ベトナムに帰国した後ですが、やはり多くの場合は「技能の習得」というのは名ばかりで、わずかな貯えをもって帰国するだけなので、技能を自国でフィードバックするのは難しいのが実態のようです。
技術の移転というよりも、日本で学んだ日本語を活かして日系企業に就職したり、日本語に関するビジネスを展開したり、という例が多いです。
まとめ
せっかく日本に憧れ、夢と希望を持ってやってきたベトナム人技能実習生の実態をみると、あまりにも過酷だといわざるを得ません。
全ての実習生がそうだとはいいませんが、多くの事例や報告などから判断する限り、決して理想的な就労環境とはいえないでしょう。
こうした実態が野放しになったままだと、やがては大きな国際問題となり、日本に対するリスペクトも低下すると思われます。
政府・関係者や、現場で技能実習生を預かる企業の真剣な改善の取り組みをお願いしたいものです。
著者プロフィール
ペンネーム:トビウオ
マレーシア(KL)在住 海外経験はこの他にヤンゴン(2回)、ホーチミン、海外40都市への出張経験があります。
早稲田大学政治経済学部卒業 大手通信会社~大手調査会社のヘッド~ITベンダー等を経験しています。