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AI導入58%でも成果は“内向き”止まり|『DX動向2026』が示すレガシーマイグレーションの優先順位
2026/09/10

AIや生成AIの導入が急速に進んでいます。しかし、「AIを導入した企業が、そのまま企業価値を高められているか」という問いに対しては、まだ明確に「Yes」とはいえません。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2026年7月に公表した「DX動向2026」では、日本企業のAI導入・試験利用が58.0%に達したことが明らかになりました。AI活用そのものは、もはや一部の先進企業だけの取り組みではありません。
一方で、AIによって得られた成果を見ると、「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%であるのに対し、「顧客満足度が向上した」は4.5%、「売上や利益が向上した」はわずか3.9%にとどまっています。
つまり、AI導入は進んでいるものの、その成果はまだ「社内の効率化」という内向きの領域に集中しているのです。
この状況を変えるために重要になるのが、AIツールを増やすことだけではありません。AIが企業の中核業務や顧客接点、データ活用まで入り込めるよう、既存システムそのものを見直すことが必要です。
この記事では「DX動向2026」のデータを読み解きながら、AI活用を企業価値創出につなげるために、なぜレガシーマイグレーションが重要なのか、そしてどのシステムから刷新すべきなのかを解説します。
- レガシーマイグレーションについて知りたい方
- AIを活用したい方
これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばレガシーマイグレーションの特徴が丸わかりですよ。
AI導入率58%――日本企業のAI活用は「導入するか」から「どう成果につなげるか」へ
「DX動向2026」でまず注目したいのが、AIの導入状況です。
調査では、「AIを導入している」が42.3%、「現在、試験利用している」が15.7%となり、合計58.0%の企業が何らかの形でAIを導入・試験利用していることが分かりました。
企業の半数以上がAIに取り組んでいることからも、AI活用は実証実験の段階から、本格的な企業活動へ移行しつつあるといえます。
さらに生成AIについて見ると、「導入している」と回答した企業は2024年度の22.6%から2025年度には44.0%へ急増しています。わずか1年で導入率が大幅に上昇しており、生成AIが企業のIT環境に急速に組み込まれていることが分かります。
しかし、ここで重要なのは「導入率が高い=DXが成功している」というわけではない点です。
生成AIの組織内での利用状況を見ると、「個人で業務利用している」が63.3%、「個人や部署で試験利用している」が44.8%である一方、「部署の業務プロセスに組み込まれている」は11.9%、「全社的なサービスに組み込まれている」は18.6%にとどまっています。
つまり、現在のAI活用は「社員一人ひとりが便利なツールとして使う」段階が中心です。
これは決して悪いことではありません。まず個人レベルでAIを使い、業務効率化を実現することは、AI活用を定着させるうえで重要です。
しかし、企業として次の段階へ進むには、個人の生産性向上を組織全体の業務プロセスや顧客価値につなげなければなりません。そこで問題になるのが、AIを組み込む「土台」です。
91.6%が「効率化・迅速化」――なぜAIの成果は内向きに偏るのか
AI導入による具体的な効果を見ると、日本企業が現在どこにAIの価値を感じているのかが明確になります。
最も多かったのは「業務が効率化したり迅速化した」で91.6%。次いで「企画提案等の品質や速さが向上した」が48.9%、「残業時間の削減につながった」が29.2%でした。
一方、「顧客満足度が向上した」は4.5%、「売上や利益が向上した」は3.9%です。
この差は非常に大きいといえます。
AIを使って資料を作成する。会議の議事録を要約する。社内文書を検索する。プログラムコードを生成する。問い合わせへの回答を支援する。
こうした使い方は、AIの導入効果を実感しやすく、比較的短期間で成果を出せます。
実際、「DX動向2026」でも、AIの用途は「文書・音声の要約・翻訳・校正」が82.5%、「文書・レポートの作成」が80.5%、「情報検索・収集・分析・レポーティング」が77.0%と、個人の業務効率化につながる用途が中心です。
一方、「生産・物流・サービス提供の計画支援」は6.0%、「自社製品・サービスの高度化」は10.9%にとどまっています。ここから見えてくるのは、AIそのものの問題ではありません。
むしろ、「AIを企業の本質的な業務に組み込むための環境」が十分に整っていないことが大きな課題だと考えられます。
AIが社内文書を作成するだけなら、既存システムとの連携は最低限でも成立します。しかし、AIを使って需要予測を行う、顧客ごとにサービスを最適化する、販売データと生産データをリアルタイムに分析する、新しいサービスを提供するといった段階になると話は変わります。
複数の古いシステムにデータが分散していたり、システム同士が連携できなかったり、データ形式が統一されていなかったりすれば、AIを導入しても企業全体の変革にはつながりません。
AI時代には、「AIを導入すること」以上に「AIが活躍できるシステム環境を整えること」が重要になっているのです。
DXの成果指標も80%が「内向き」――システム刷新を後回しにしてはいけない理由
この問題はAIだけに限りません。
「DX動向2026」では、DXの成果についても、業務効率化などの「内向き」の領域では成果が得られている一方、既存製品・サービスの高付加価値化や新規ビジネス創出などの「外向き」の領域では成果が限定的だとされています。
さらに、DXの成果指標を設定している企業に、その対象を尋ねたところ、「内向きの業務改革(社内の効率化)」が80.0%で最も高く、「システム改革」が55.4%でした。
それに対して、「外向きの業務改革(新たなビジネスや顧客価値の創出)」は33.5%、「経営改革(デジタル事業売上高、市場シェア等)」は16.3%にとどまっています。
つまり、日本企業のDXは「社内業務を効率化する」ことには一定の成果を上げているものの、「事業そのものを変える」という段階にはまだ十分到達していません。
この状況でAIだけを追加していけば、どうなるでしょうか。
例えば、古い販売管理システムにAIを追加しても、そもそも顧客データが分断されていれば、高度な顧客分析はできません。
製造現場のデータが基幹システムに閉じ込められていれば、AIによる需要予測や生産最適化も限定的になります。
つまり、AI活用の高度化には、AIそのものだけでなく、その下にあるデータ基盤や業務システムの整備が不可欠です。
ここで重要になるのが「レガシーマイグレーション」です。
なお、「DX動向2026」自体がレガシーマイグレーションを直接「最優先すべき」と結論づけているわけではありません。しかし、AI活用が個人・業務効率化に集中し、企業価値創出への展開が限定的であるという調査結果から考えると、AIを企業変革につなげるための基盤として既存システムの刷新を検討することには大きな意味があります。
すべてを一気に刷新する必要はない――レガシーマイグレーションの優先順位
では、企業はどのシステムからマイグレーションすべきなのでしょうか。
優先度1:顧客価値に直結するシステム
最初に検討したいのは、顧客接点に近いシステムです。
EC、CRM、予約、問い合わせ、販売、マーケティングなど、顧客との接点を担うシステムは、DXによる外向きの成果と直接関係します。
ここを刷新することで、顧客データの統合やパーソナライズ、AIによる問い合わせ対応、需要予測など、新しいサービスにつながる可能性があります。
優先度2:データが分断されている基幹システム
次に重要なのが、企業内にデータが分散しているケースです。
営業、販売、在庫、生産、会計などのシステムがそれぞれ独立していると、AIに分析させるためのデータを集めるだけでも大きな手間がかかります。
「DX動向2026」でも、データ整備・管理・流通の課題として「データの標準化が難しい」が36.8%、「管理システムが整備されていない」が32.6%とされています。
AI活用を本格化するなら、単にAIツールを導入するのではなく、「AIが利用できるデータをどう作るか」という視点が必要です。
優先度3:他システムとの連携を阻害しているシステム
最後に、企業内外とのデータ連携を妨げているシステムです。
「DX動向2026」では、企業外部とのデータ連携はまだ限定的で、「特定企業間での直接的なデータ連携」を実施している企業は35.6%、「サプライチェーン内でのデータ連携プラットフォームの利用」は22.5%にとどまります。
今後、AIエージェントや高度なデータ分析が普及すれば、企業内部だけでなく、取引先や顧客、サプライチェーンとのデータ連携も重要になります。
そのため、外部連携を阻害しているレガシーシステムは、早い段階から刷新候補として検討する価値があります。
「AIを入れる前にシステムを直す」ではなく「AI時代を前提にシステムを変える」
レガシーマイグレーションを考える際、注意したいのが「古いシステムを新しいシステムに置き換えるだけ」にしないことです。
単純に既存システムを別の環境へ移行するだけでは、現在の業務プロセスやデータ構造の問題まで引き継いでしまう可能性があります。
重要なのは、「このシステムを移行することで、将来的に何ができるようになるのか」を明確にすることです。
「DX動向2026」では、DXの成果が出ている企業の特徴として、経営者のデジタルに関する見識が高いこと、経営者・IT部門・業務部門の協調が取れていること、全社レベルで業務プロセスの最適化に取り組んでいることなどが挙げられています。
つまり、システム刷新をIT部門だけのプロジェクトとして扱うのではなく、経営・業務・ITが一体となって「何を変えるのか」を決めることが重要です。
まとめ
いかがでしたか。本日はレガシーマイグレーションの優位性について「DX動向2026」の内容をもとに解説していきました。
レガシーマイグレーションは「古いシステムを新しくするためのIT投資」と捉えるのではなく、「AI時代の企業変革を可能にするための基盤整備」として考える必要があります。
すべてのシステムを一度に刷新する必要はありません。
まずは、顧客価値に直結するシステム、データ活用を阻害しているシステム、他システムとの連携を妨げているシステムから優先順位をつけて見直す。
そして、単なる移行ではなく、「AIによって業務やサービスをどう変えるのか」という未来像から逆算してシステムを再設計する。
AI導入が当たり前になりつつある今、日本企業のDXに求められているのは「AIを導入すること」から「AIを使って企業そのものを変えること」への転換なのです。



