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アジャイル開発とウォーターフォール開発でリスクとスピードを徹底比較

2025/10/29

システム開発の現場では、プロジェクトの進め方として「ウォーターフォール開発」と「アジャイル開発」が広く知られています。

どちらも目的は同じ──高品質なシステムを納期内に完成させることですが、そのアプローチはまったく異なります。

この記事では、特に「リスク」と「スピード」という2つの視点から両者を徹底比較し、それぞれの長所・短所、そしてどんなプロジェクトに向いているかを解説します。

  • アジャイル開発やウォーターフォール開発の違いを知りたい方
  • 社内のIT人材が不足している方
  • システム化開発を行いたい方

これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めばアジャイル開発とウォーターフォール開発のそれぞれの特徴が丸わかりですよ。

ウォーターフォール開発とは

ウォーターフォール開発(Waterfall Model)は、上流から下流へと「滝のように」工程が流れる開発手法です。

要件定義 → 設計 → 実装 → テスト → 運用という順序で、各工程を明確に区切り、前工程が完了しない限り次に進まないという特徴があります。

この手法は「計画重視型」であり、特に大規模開発や官公庁案件など、仕様が明確で変更の少ないプロジェクトで高い効果を発揮します。

一方で、柔軟性の低さが最大の弱点とも言われます。

アジャイル開発とは

アジャイル開発(Agile Development)は、「変化に素早く対応する」ことを目的とした柔軟な開発手法です。

短期間(1〜4週間程度)の開発サイクル=スプリントを繰り返し、都度ユーザーや顧客のフィードバックを取り入れて改善を続けます。

アジャイルはウォーターフォールに比べ、計画よりも「対話」「変化への対応」「顧客との協調」を重視します。

スタートアップやWebサービスのように、市場の変化が激しいプロジェクトに非常に適しています。

スピードの比較:柔軟性か、一貫性か

ウォーターフォール開発のスピード

ウォーターフォール開発は、最初に要件定義や設計を徹底的に行うため、初期段階で多くの時間を要します。

全体像を明確にした上で進めるため、序盤はゆっくりとしたスタートになりますが、仕様が確定すれば後は設計書に沿って着実に開発を進められるため、後半はスムーズで安定したスピードを発揮します。

つまり、「初期は遅く、後半は安定して速い」という特性を持った開発手法です。

ただし、計画が前提となるため、市場環境や顧客ニーズの変化に弱い面もあります。

途中で仕様変更が発生すると、前工程にまで遡って修正が必要になり、結果として大幅な遅延を招くリスクがあります。

計画通りに進めば非常に効率的ですが、柔軟性に欠ける点がスピード面での課題といえます。

アジャイル開発のスピード

アジャイル開発の最大の特徴は、「短いサイクルで動くものを早く届ける」点にあります。

小規模な機能を素早くリリースし、顧客やユーザーの反応をリアルタイムで確認しながら改善を重ねることで、初期段階から価値を提供できるスピード感が生まれます。

変更や要望にも柔軟に対応できるため、変化の激しい市場環境に強い開発手法といえます。

一方で、仕様が開発の終盤まで確定しないケースも多く、全体の完成像を見通しにくいという課題もあります。

そのため、チーム内の密なコミュニケーションと、優れたタスク管理能力がスピード維持の鍵となります。

個々の判断力と連携力が高いほど、アジャイルの真価が発揮されるのです。

リスクの比較:予測可能性と柔軟性のトレードオフ

ウォーターフォール開発のリスク構造

ウォーターフォール開発の最大の強みは、全体を一貫して見通せる高い計画性にあります。

要件定義から設計、実装、テスト、運用へと順序立てて進むため、進捗管理が明確で、各工程ごとに成果物をレビューしながら品質を確保しやすい構造です。

大規模プロジェクトや厳密な品質管理が求められる現場では、その安定性が大きな利点となります。

しかし一方で、要件定義の段階での見落としや誤りが致命的なリスクとなります。

工程が下流に進むほど修正が難しく、手戻りが発生するとコストもスケジュールも大幅に膨らむ可能性があります。

また、ユーザーが実際に製品を手にするのは開発の最終段階であるため、「完成してみたらニーズと違っていた」という事態が起こりやすい点も課題です。

つまり、ウォーターフォールにおける最大のリスクは、初期段階での判断ミスが後工程に波及しやすい構造そのものにあるといえます。

アジャイル開発のリスク構造

アジャイル開発は「変化を前提とした柔軟な進行」が特徴であり、要件や仕様の変更にも迅速に対応できます。

これにより、初期段階での誤りや課題を早期に発見し、修正を重ねながら品質を高めていくことが可能です。

リスクを一度に抱え込むのではなく、短いサイクルで分散・軽減できる点は大きな強みといえます。

しかしその一方で、頻繁な方向転換が発生すると、全体像やゴールが曖昧になり、開発チームの認識がばらつくリスクもあります。

ビジョンの共有が不十分なまま進行すれば、成果物が意図とずれてしまう危険も高まります。

また、関係者間の合意形成が遅れると、判断の遅延や迷走につながることもあります。

したがって、プロダクトオーナーやスクラムマスターが的確に舵を取り、チーム全体を同じ方向へ導くリーダーシップが極めて重要です。

チーム運営とコミュニケーションの違い

ウォーターフォール開発では、要件定義や設計などの上流工程と、実装・テストといった下流工程の担当が明確に分かれています。

役割分担がはっきりしているため管理はしやすいものの、縦割り構造になりやすく、部門間の情報共有や連携が不足しがちです。

その結果、問題発生時の対応が遅れたり、顧客の要望が反映されにくいという課題も生じます。

一方、アジャイル開発ではチーム全体がプロジェクトの全体像を共有し、日々のミーティングなどを通じて密なコミュニケーションを行います。

「自律分散型のチーム運営」が特徴で、メンバーが自ら考え、柔軟に意思決定できる点が強みです。

スピーディーな改善やイノベーションが生まれやすい反面、組織文化として対話が根付いていない場合は、浸透に時間がかかることもあります。

リスク×スピードのマトリクスで見る比較

観点ウォーターフォール開発アジャイル開発 
開発スピード初期は遅いが後半は安定初期から早いが変化に左右される
仕様変更対応 困難(再設計が必要) 容易(スプリントごとに調整可能)
品質管理文書・レビューで管理 テスト駆動・継続的改善で管理
リスクの種類初期設計の誤りが致命的スコープ拡大・方向性の迷走
チーム体制上下関係・明確な役割分担フラットで協働的
適した案件仕様が明確・長期・安全重視変化が激しい・スピード重視

このように、ウォーターフォールは「計画と安定性」、アジャイルは「柔軟性と即応性」を強みとしています。

つまり、どちらが優れているというよりも、「プロジェクトの特性」によって最適な選択が異なります。

現代におけるハイブリッド型開発の台頭

近年、システム開発の現場では「ウォーターフォール」と「アジャイル」の両方の特性を取り入れたハイブリッド型開発が急速に広がっています。

これは、プロジェクト全体を一つの手法で進めるのではなく、工程ごとに最適な開発手法を選択する柔軟なアプローチです。

具体的には、上流工程(要件定義・基本設計など)をウォーターフォール型で進め、仕様をしっかりと固めたうえで、下流工程(開発・テスト・改善)をアジャイル型でスピーディーに繰り返す形が一般的です。

これにより、計画性と柔軟性という相反する要素を高いレベルで両立させることができます。

また、このハイブリッド型は、リスク管理と開発スピードのバランスを取る点でも非常に有効です。

上流でリスクを抑えながら、下流ではユーザーや関係部門からのフィードバックを素早く反映できるため、より現実的で満足度の高いシステムを実現しやすくなります。

特に近年では、企業の業務システムや公共案件といった大規模・高信頼性が求められる分野でも、ユーザー部門との協働を重視する動きが強まっており、ハイブリッドモデルの採用が増加しています。

堅実さとスピードの両立を目指す現代の開発現場において、ハイブリッド型はまさに最適解の一つといえるでしょう。

まとめ

いかがでしたか。本日はウォーターフォール開発とアジャイル開発それぞれの特徴について解説していきました。

ウォーターフォール開発とアジャイル開発は、単なる手法の違いではなく、「リスクをどの段階でどう扱うか」の違いとも言えます。

ウォーターフォールは「最初にリスクを潰す」アプローチ、アジャイルは「進めながらリスクを調整する」アプローチです。

スピードを求めるならアジャイルが有利ですが、安定した品質と管理性を重視するならウォーターフォールが適しています。

また、現代の開発現場では、どちらか一方ではなく「両者のいいとこ取り」をすることが現実的な最適解と言えるでしょう。

最終的に重要なのは「手法そのもの」ではなく、チームがその手法をどれだけ理解し、運用できるか*という点です。

スピードもリスクも、結局は「人と組織の成熟度」によって決まります。

その意味で、アジャイルとウォーターフォールの比較は、単なる技術論を超えた「組織文化の鏡」でもあるのです。

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