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外観検査の活用事例を紹介|オフショア開発
2025/05/14

近年、製造業を中心に「外観検査」の重要性がますます高まっています。
従来は人の目に頼っていたこの工程も、AIや画像処理技術の進化により、大きく変化しています。
この記事では、外観検査の概要とともに、実際の活用事例を紹介し、導入メリットや今後の展望について解説します。
- 外観検査の精度を上げたい方
- 製造業の方
- 社内のIT人材が不足している方
これらに当てはまる方におすすめの記事となっています。これを読めば外観検査の最先端技術が丸わかりですよ。
外観検査とは?
外観検査とは、製品の表面にキズ・汚れ・バリ・異物混入・印字ミスなどがないかをチェックする品質管理の工程です。
製品の見た目は、エンドユーザーの満足度やブランド信頼に直結するため、多くの製造業で欠かせないプロセスとなっています。
従来は作業者が目視で行うことが一般的でしたが、作業者の疲労や人による判定基準のばらつきなどの課題がありました。
現在では、画像処理やAIを活用した自動検査システムの導入が進んでおり、精度の向上や効率化が実現されています。
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外観検査の技術革新とその背景
製造現場における品質管理の中核を担う「外観検査」は、近年、画像処理技術やAI(人工知能)の進化によって大きな転換期を迎えています。
従来の人手による検査から、精度と効率を兼ね備えた自動化へと進化を遂げつつあり、その背景には複数の技術革新が存在します。
高解像度カメラの普及により微細な欠陥も検出可能に
かつての検査装置では検出できなかったような微細なキズや異物、色ムラなども、現在では高解像度カメラの導入によって正確に捉えられるようになりました。
これにより、製品のばらつきを抑えた安定供給が実現し、特に精密さが求められる分野での導入が加速しています。
ディープラーニングが「不定形な欠陥」に対応
AIの中でも特に注目されるのが、ディープラーニング(深層学習)の活用です。
従来は人の目や経験に頼らざるを得なかった「不定形」かつ「予測困難」な欠陥にも対応できるようになり、AIが大量の良品・不良品の画像データを学習することで、パターン化が難しい異常の検出が可能になりました。
エッジAIの導入でリアルタイム処理を実現
AI処理をクラウドではなく現場の装置で直接行う「エッジAI」も注目されています。
この技術により、画像の取得から判定までの処理時間が大幅に短縮され、製造ラインを止めることなく即時に不良品を除外することが可能です。
結果として、ダウンタイムの削減と生産性向上に貢献しています。
クラウド連携で検査データを活用
外観検査のデジタル化が進む中で、クラウドとの連携も重要性を増しています。
検査結果や画像データをクラウドに蓄積することで、長期的な品質トレンドの分析や不良発生の傾向把握が可能となり、PDCAサイクルによる継続的な品質改善にも役立ちます。
各業界で導入が加速中
これらの技術革新を背景に、外観検査の自動化は自動車、電子部品、食品、医療機器、化粧品など幅広い業界で採用が進んでいます。
人手不足の解消やグローバル競争への対応といったニーズも重なり、今後さらに技術導入が加速することが見込まれています。
外観検査の活用事例
DEHAソリューションズではさまざまな外観検査のシステムを開発しています。ここではその活用事例を一部ご紹介します。
① サプリメントの種類分け検査
この画像処理システムでは、RGB・HSV・LABの3種類の色空間を扱えます。
それぞれのチャンネル(R/G/B、H/S/V、L/A/B)を個別に抽出して処理・判定が可能です。
これにより色ごとの特徴を多面的に分析でき、将来的に類似した色のサプリメントが増えた場合でも、識別要素を増やして精度の高い分類が可能となります。
ポイント:
- 多様な色空間に対応
- 類似色への対応力
- 高精度な種類分け
② チョコレート製品の欠陥・異物検出
チョコレートの傷や、アルミホイル上のアルミ片など、同系色で判別が難しい欠陥・異物に対応します。
3Dデータから2次元画像を生成し、コントラスト差と面積情報をもとに欠陥を検出します。
ポイント:
- 3Dスキャン→2D変換処理
- コントラストと面積で検出
- 同系色の欠陥に強い
③コーヒー豆の品質検査:異物と隠れた欠陥豆の検出
ハイパースペクトルカメラを用いた反射スペクトル解析により、コーヒー豆に混入した「木片」や「欠点豆」を異常検知。
波長ごとの光強度差を利用して、良品との違いを定量的に把握することで、精度の高い検出が可能となっています。
ポイント:
- 波長別スペクトルで異物・欠陥を識別
- 木片と欠点豆を分けて検出ロジックを設計
- 可視画像との併用でさらなる精度向上を目指す
④ ロボットアーム向け画像処理(ばら積み部品の仕分け)
ランダムに積まれた部品を画像処理によって認識し、ロボットアームで種類別に仕分けるシステム。ばら積み状態でも位置と種類を特定可能。
ポイント:
- ロボット連携による自動仕分け
- ばら積み対応の認識技術
外観検査を導入するメリット
品質の安定化と向上
AIによる外観検査は、常に一定の判定基準で処理されるため、人の目によるばらつきがなくなり、品質の均一化が図れます。
これにより、製品全体の信頼性が向上し、不良品の流出リスクも大幅に減少します。
特に、ミクロン単位での精度が求められる製品では、AIの高精度な検出力が大きな強みとなります。
作業効率の大幅な向上
AIを活用した自動検査は、目視検査と比べて処理スピードが圧倒的に早く、生産ラインの流れを妨げることなく、検査のスループットを飛躍的に向上させます。
24時間稼働も可能なため、生産性の向上と同時に人件費の削減にもつながります。
属人化の解消
これまでの検査業務は、熟練作業者の経験や感覚に依存する部分が多く、人材の育成や技術継承が課題となっていました。
AI検査の導入により、誰でも同じ基準で業務を遂行できる環境が整い、属人化の問題を解消できます。
これにより、安定した検査体制の構築が可能となります。
トレーサビリティの強化
AI外観検査では、すべての検査データがデジタルで記録・保存されるため、不良品が発生した場合でも過去の記録を即座に確認し、原因を特定することができます。
製品ごとの検査履歴が残ることで、品質保証やクレーム対応の精度も向上し、顧客からの信頼確保にもつながります。
労働力不足への対応と省人化
近年、製造業では深刻な人手不足が課題となっています。外観検査の自動化は、こうした課題に対して有効な省人化手段のひとつです。
人手に依存しない検査体制を構築することで、少人数でも高い検査能力を維持でき、生産体制の安定にも寄与します。
導入時の課題と今後の展望
初期コストの負担
AIによる外観検査システムの導入にあたって、まず課題となるのが初期投資の大きさです。高精度カメラや照明機器、AIの学習環境の構築、さらには既存ラインとの統合作業など、必要な設備や技術には相応の費用がかかります。
特に中小企業にとっては、コスト面が導入判断の壁になるケースが多く見られます。
学習データの準備が必要
次に挙げられるのが、AIモデルを構築するための学習データの整備です。AIが高精度な判定を行うには、「良品」と「不良品」それぞれの事例を豊富に学ばせる必要があります。
しかし、不良品の発生数が少ない場合はデータ収集に時間がかかり、AIの精度向上に課題が残ることもあります。
現場ごとの環境変化への対応
製造現場は一様ではなく、照明条件や製品形状、材質などが異なるため、環境ごとの調整が不可欠です。
たとえば、光の反射や背景の違いによって、カメラが製品を正しく認識できなくなる場合があります。
こうした細かな調整には、現場ごとのノウハウと運用力が求められます。
技術の進化で導入ハードルは低下中
これらの課題に対し、近年は技術的な進歩により導入のハードルが徐々に下がってきています。
たとえば、ノーコードでAI検査モデルを構築できるツールの登場により、専門知識がなくてもAIモデルの作成が可能になっています。
また、クラウドと連携することで、現場で収集したデータをオンライン上で学習・更新し、常に最適なモデルを運用できる仕組みも整いつつあります。
今後はスマートファクトリー化が加速
将来的には、検査結果をリアルタイムに製造ラインへフィードバックすることで、即時に製造条件を最適化する「スマートファクトリー」の実現が期待されています。
不良が発生した原因をAIが自動で分析し、改善アクションをシステム側から提案・実行するような自律的な生産体制が可能となれば、品質と効率のさらなる向上が見込まれます。
まとめ
いかがでしたか。本日は外観検査についてどのようなものなのかや、実際の活用事例を紹介していきました。
外観検査は、製造業の品質管理を支える要として、今後ますます重要性を増していく分野です。
AIや画像処理技術の活用によって、人手による検査の限界を超えた高精度・高速な検査が可能となり、多くの業界で大きな成果を上げています。
導入に際しては課題もありますが、現場の特性や製品特性に合ったシステム設計を行うことで、その効果は大きくなります。
今後の技術進化とともに、外観検査の自動化はさらに進化し、製造業の競争力向上に寄与していくことでしょう。